家計改善の近道はなにか。第一歩は「支出を減らすこと」だが、節約ばかりでは人生を楽しめなくなってしまう。なにを削り、どこを守ればいいのか。3人の「マネーのプロ」に、実際の家計簿をみてもらって、対策を聞いた。第4回は年収1100万円で「老後不安が裏目に。過剰な投資が家計を圧迫」という金戸家のケースについて――。(第4回、全4回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年1月15日号)の掲載記事を再編集したものです。

節約したいなら、週ごとにお金を管理

金戸家は妻のパート代と合わせ、世帯年収1100万円と高収入にもかかわらず、毎月の収支がなぜか赤字。貯蓄も年収の割には少なく、たった350万円しかない。3人の子どもたちは、まだ教育費もかかる時期であり、抜本的なテコ入れが必要なのは明らかだ。

写真=iStock.com/enciktep

問題点は2つある。1つは、妻の買い物に計画性がないため、日々の生活費がかさんでいること。その証拠に毎月10万円近くが食費に消える。いくら5人家族とはいえ、もう少し抑えられてもいい。

妻は家計のやりくりに興味がないわけではない。むしろ逆で、雑誌のマネー特集を熱心に読んではノウハウを取り入れようと意欲だけは高い。ところが、いまひとつ成果が出ないのは、何にいくら使っているのかを把握できていないため。横山氏が見たところ、「一応予算の割り振りは考えているが、予算分けの意味がなくなってしまっている。大雑把な性格も手伝ってか、各費目で予算が不足したり余ったりして、費目間でお金が行き来している」という状況だ。

横山氏のアドバイスは、月ごとではなく、週ごとにお金を管理すること。数え切れないほどの家計を見てきた経験から、「ポンと10万円渡されて、1カ月間、これでやりくりするように言われても、うまく使える人はせいぜい1、2割」だという。実は横山氏自身も週ごとの管理法を取り入れている。「食費や日用品などの生活費は、1週間2万円と決めています。万一足りない場合、翌週から『前借り』もありますが、必ず翌週で帳尻を合わせます」。月単位では大雑把すぎ、でも1日単位で管理しようとすると煩雑になる。経験上、週単位がちょうどいいのだという。

これで日常的な生活費は改善が見込めるとして、家計全体を抜本的に改めるには、やはり固定費の見直しが必要。とくに、老後の不安を過大視して、保険や財形などに手を出しすぎていることが、金戸家の2つ目の問題点だ。

複数の保険に計7万3000円も掛けているほか、iDeCoや財形貯蓄も行っている。「『いったん先取りタイプ』と呼んでいるのですが、近ごろこうした方が増えています。将来への不安が先に立ち、家計の実態を把握しないまま、保険や財形に多くを回しすぎている典型的なケースです」(横山氏)。

金戸家の場合
●家族構成:夫 53歳 販売、妻 52歳 パート、長男 19歳、次男 17歳、長女 12歳 ●年収(額面):夫 1040万円、妻 60万円(うちボーナス 夫 60万円) ●貯蓄額:350万円


定年後の資金づくりのしすぎで赤字家計に。iDeCo、財形、個人年金保険、学資保険など先取りの制度を利用して貯蓄。そのため手持ちの貯蓄が少なく、何かイレギュラーに大きな出費がかかるときは財形を取り崩したりしている。

加谷氏も「個人年金保険はやめましょう。掛け金、運用益非課税になるiDeCoのほうが節税メリットは大きい」と指摘。午堂氏は、「財形を減らした分、奥さんもiDeCoに入れば節税にもなる」と提案。「iDeCoのなかで投資信託を選べるため、別途、証券会社に口座を開く必要はなく手数料も割安。60歳まで引き出せないので、確実に老後資金になります」