東京五輪の競技日程の大枠が決まった。競技が行われるのは、主に「朝」と「夕方」。もし時計を2時間早める「サマータイム」が導入されれば、朝の試合は涼しくなる一方、夕方は2度以上も気温が上がるとみられている。スポーツライターの酒井政人氏は「暑さはアスリートの最大の敵。導入のメリットは薄く、リスクのほうが大きい」と警鐘を鳴らす――。

「サマータイム=涼しくなる」は正しくない

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け「サマータイム」の導入が検討されている。その理由は「暑さ対策」だといわれているが、果たして本当に効果はあるのだろうか。

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東京オリンピックのマラソン(レース日は女子が8月2日、男子が同9日)を例に考えてみよう。サマータイムが導入されれば、スタート時間は午前7時から、もっとも涼しい午前5時となり、日が高くなる前にレースを終えることができる。

今年8月2日、東京の最高気温は36.5度だった。午前7時は29.2度で午前9時は32.7度だったが、サマータイムで2時間早まれば、午前5時は28.4度、午前7時は29.2度と終盤の気温は3.5度も下がる。ここだけを切り取れば、暑さ対策としての効果はあるだろう。

しかし、「サマータイム=涼しくなる」というイメージは正しくない。

通常、夏に開催されるオリンピックや世界選手権は、どの競技も「暑さ」を避けるために、日差しの強い時間帯(13~16時頃)には試合を中断して、モーニングセッション(午前中)とイブニングセッション(夕方以降)にわけて行われる。

この時、注意が必要なのは、時計の針を2時間繰り上げることで、モーニングセッションはぐっと涼しくなるものの、反対にイブニングセッションは暑くなるということだ。

注目カードはイブニングセッションに集中

2020年東京五輪の競技日程の大枠はすでに固まっている。選手が実力を発揮できる環境をどう作るか。大会組織委員会は「アスリートファースト」の視点から、史上最多の33競技339種目を“パズル”のように、組み合わせたという。

大会期間は7月24日~8月9日までの全17日間。すでに暑さ対策として、男子50km競歩を7時半から6時に、トライアスロンを10時から8時に、ゴルフを9時から7時に繰り上げるなど、一部の競技の予定を当初より早めている。その他にも、終電に対応できるようにバレーなどは終了時間を繰り上げ、人気競技のメダル決定日の重複を避けるなどの工夫も行われた。

競泳は、多額の放映権料を払う米テレビ局NBCの意向に配慮するかたちで午前中に決勝が行われるが、それ以外のメダルがかかるような競技はイブニングセッションに集中している。

屋外競技では、陸上競技はモーニングセッションが9~13時、イブニングセッションは19~22時というのが基本的な流れだ。モーニングセッションは予選が中心。イブニングセッションは準決勝・決勝が行われ、日本のゴールデンタイムにテレビ中継が行われる。サッカーは16時30分~21時30分に試合が組まれており、男子の準決勝は第一試合が18時、第二試合が20時。決勝は20時にキックオフとなる。