「iPhone X」は年内に生産停止との観測も

世界のスマートフォンの出荷台数が初めて前年の実績を下回った。世界経済にとって、それは軽視できない変化だ。スマートフォンは、携帯電話の“常識”を覆し、それまでにはなかった“需要”を生み出した重要なイノベーションだった。そのイノベーションに陰りが見え始めた。スマートフォンの次のイノベーションとは一体なんだろうか。

米国の市場調査会社IDCのレポートによると、2017年の世界スマートフォン出荷台数は、前年から0.5%少ない14億6200万台だった。2007年にアップルが「iPhone」を発売して以降、スマートフォン市場は成長を続けてきた。前年実績を下回るのはこれが初めてだ。

昨年発売したアップルの最新機種「iPhone X」については、2018年中にも生産が停止されるとの観測もある。年初来、そうした見方を反映して、アップルの株価は伸び悩んでいる。スマートフォン市場の先行きに関しても、需要は後退するとの見方が多い。それが現実のものとなれば、スマートフォン関連の需要を取り込んできた国内企業にも、相応の影響がでるだろう。

2017年11月3日、米アップルのスマートフォン「iPhone X(アイフォーン・テン)」発売で、行列を作って開店を待つ人々。行列の熱狂は以前に比べて落ち着いている。(写真=時事通信フォト)

「写真のシェア」など以前は考えられなかった

2007年に登場したiPhoneは、携帯電話の常識を大きく変えた。あらかじめインストールされたアプリケーションを使うのではなく、必要に応じてアプリをダウンロードし、それをクラウド上で管理することが新しい常識になった。それとあわせて、世界各国で高速通信網の整備が進んだ。iPhoneの登場により、人々はネットワーク空間と密接につながるようになった。

それはサービスにおいても多様な「イノベーション」を生み出すことになった。たとえばスマートフォンで写真や動画を撮影し、SNSで友人とシェアすることは、いまは当たり前の光景だが、これはスマートフォン以前ではほとんど考えられなかったことだ。

リーマンショック後の世界経済は、こうしたIT企業のイノベーションに支えられてきた。その基盤を生み出したのが、アップルの創業者スティーブ・ジョブズの情熱だ。

破綻寸前の会社を、世界最大の企業に変えた

ジョブズが社長に復帰した1997年、アップルは経営破綻寸前だった。強烈なパーソナリティーゆえに、一時、同社を追われたジョブズは、復帰後、「iPod」を世に送り出し、ソニーから携帯音楽プレーヤーのシェアを奪った。その後、iPhone、iPadと多くの人を魅了する画期的な製品を発売し、新しい需要を生み出した。現在、アップルは時価総額で世界最大の企業になっている。

新型のiPhoneが発表されるたびに、直営店には発売を待ち望むファンが長蛇の列をつくるようになった。そのようなプロダクトはこれまでなかった。iPhoneが大勢に愛され、必要とされたことの裏返しだ。