日本人の95%は60歳以上生きる。多くの人が若いうちから“安心料”としてかける死亡保障は結果的にはムダになる確率が高い。それに、日本には公的な「死亡・医療保障制度」が充実し、万が一でも家族は路頭に迷わずに済む。FPの筆者はむしろ備えるべきは可能性の高い「長生きリスク」だと語る。そのために30、40代が今からすべきこととは?

なぜ日本人は「長生き」の備えではなく「死ぬ」備えをするのか

本コラムでは「あなたとお金の生存戦略」というテーマでお金との関わり方を考えています。長い人生を生き延びていくヒントはどこにあるのでしょうか。今回のテーマは「長生きする可能性」です。

日本人の多くは生命保険に加入しています。再保険会社スイス・リーの2012年調査によると、日本の生命保険料総額は米ドル換算で5240億ドルと、米国の5680億ドルに迫る世界2位。世界全体の生命保険料(2兆6210億ドル)の約20%を世界人口の1.6%でしかない日本人が払っている計算になります。それくらい日本人は生命保険が好きなのです。

生命保険はいろんなリスクに備えることができます。死亡時のリスクはもちろん、病気へのリスク、失職時の所得減少のリスク、長生きへのリスクにも備えることができます。

▼日本人は「若くして死ぬ確率」を大きく見積もりすぎ

しかし、自分の生命保険契約について、月々支払う保険料の額を言えたとしても、その保険料の内訳、例えば、保険の原価である「純保険料」や、保険会社の経費や利益になる「付加保険料」などを説明できる人は少ないと思います。また、「掛け捨て部分がいくらで、貯金部分がいくら」という問いに答えることも難しいでしょう。

その理由は、契約が複雑でわかりにくいというのがひとつ。また、契約している私たちがあまりにも保険の仕組みに無関心で、言われるがままに加入しているケースが多いというのがひとつ。

21世紀における「あなたとお金の生存戦略」を考えたとき、多くの日本人が「自分が若くして死ぬ確率」を大きく見積もっているのです。そうした誤解をもとに生命保険と関わることはいかがなものかと思わざるをえません。ここに「客観的事実」がひとつあります。