将棋界では「不調も3年続けば実力」という言葉がある。負けが続いたらどうするか、羽生善治さんが実践する“不調の乗り越え方”とは。脳科学者の茂木健一郎が解説します――。

「不調も3年続けば実力」

先日、将棋の羽生善治さんとお目にかかる機会があった。羽生さんとは、これまでも何回もお目にかかってお話ししているが、いつ会っても面白い。

今回の話もいろいろと刺激的だった。さまざまなことが話題になる中で、印象に残った言葉がある。それは、好調、不調ということに関する「経験則」である。

寝癖のイメージがある羽生善治氏。画像は2009年、名人戦を防衛した際のもの。(写真=時事通信フォト)

かつて、タイトル七冠を達成し、現在も四冠の羽生さん。将棋界の押しも押されもせぬトップだが、そんな羽生さんでも、負けることがあるのが将棋の世界。羽生さんの通算勝率は7割を超えて歴代トップだが、それでも10回に3回弱は負けていることになる。

たまたまかもしれないけれども、負けが続いたとき、どうするか? 羽生さんは、「その負けが単なる不調なのか、それとも、実力を反映しているのかを見極める必要がある」とおっしゃった。

将棋界には、「不調も3年続けば実力」という言葉があるのだという。たまたま、巡り合わせで負けが続くことがあるかもしれないが、それが3年も続けば、もはやそれは実力を表している。

自分の努力の仕方、知識その他に何らかの問題点があるものとして、点検してみなければならない。