企業の規模で残酷なほど振り分けられている

ところで、グラフ上では、女性の20代未婚率が100人未満の規模を除いて、4ポイントほど未婚率が下がっていますが、これは有業者だけを対象としており、20代の有業女性の未婚率が下がったように見えるのは、結婚後もそのまま有業者として働き続ける20代が、10年前より増えたことによります。この未婚率計算分母に、有業既婚女性が加算されたことによる計算上のマジックであり、決して20代女性の未婚率が改善されたわけではありません。

ちなみに、官公庁は民間のどの規模の企業と比較しても未婚率が低いだけではなく、この10年でむしろ未婚率を唯一下げている状況です。若者に聞いた就職したいランキングにおいても、公務員が上位を占めるのも納得です。官公庁や公務員の仕事に魅力があるというよりも、安定や安心があるという点が大きいのでしょう。特に、地方では公務員の所得は高いほうに位置づけられます。

このように、未婚率は年収およびその年収を決定づける就業先の規模によって大きく影響を受けます。特に、男性の場合は、年収の多寡または勤める企業の大小によって結婚できる者とできない者とを厳格に振り分けてしまうことになります。

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「いつかはそこそこ稼げる」という未来が見えない

「金がないから結婚できない」という若者の声を「結婚できないことを金のせいにするな」という高齢者がいます。それは高齢者が単に意地悪を言っているのでもなく、彼らが結婚した時代においては、本当に「そんなことはなかった」からに過ぎません。

昭和であっても、20代の給料は高くありませんでした。しかし、たとえ給料が安くても、将来の経済的不安を抱える若者は3割程度にとどまっていました。「今は安月給でもいつかはそこそこ稼げる」と多くが思えたからです。直属の先輩や上司を見てもそういう安心感はありました。しかし、令和の今では、20代の7割以上が将来の経済的不安を抱えています(内閣府世論調査より)。

ニュースなどでは「賃上げ」が取り上げられ、先般の自民党総裁選の候補者会見においても、岸田内閣における賃上げについては各候補とも一様に評価し、踏襲していく旨の発言が多かったですが、そうした政治家がドヤ顔をするほど成果は表れているでしょうか。若者に限らず「所得が増えた」という実感できる方は一体どれくらいいるのでしょうか。