「聞く」というよりも「聴かせていただく」

ところで、「聞く」と「聴く」では、漢字が異なりますね。

「聞く」は、門の中に耳があります。門は開けたり閉めたりができるものです。

つまり「聞く」は、自分の興味関心によって聞きたいことは聞くけれども、聞きたくないことには門を閉じてしまって、聞いているようで実は聞いていないこともあるというわけです。

「聴く」の由来は諸説ありますが、「耳+目(目が横になっている)+心」という説と、「耳+十四の心」という説があります。

どちらにしても、耳だけでなく、相手の表情や心理面などの非言語の部分にも注目しつつ、心を傾けて聴くわけです。これが「傾聴」と言われるものです。

傾聴しながら、相手の世界観をあたかも「他人事ではなく自分事」のように感じる、これが共感的な聴き方です。

「安心、受容、共感」を心がけていると、「聞く」というよりも「聴かせていただく」という姿勢に変化していきます。

「あなたの気持ちを聴かせてくれて、ありがとう」
「言いにくいことを話してくれて、ありがとう」
「この話を、私にしてくれてありがとう」

そんな感謝の気持ちが湧いてくると思います。

神谷海帆『感情のメッセージに気づくと、人間関係はうまくいく』(三笠書房)

自己犠牲を強いて相手に合わせる会話ではなく、感謝の気持ちを抱きつつ、相手を本当に理解しようとする姿勢で話を聴かせていただく。

これができてくると、相手の話を聴きながら、相手の感情が動くのと同じように、自分の感情が動くのが理解できるでしょう。

それは相手にも伝わります。「自分の話をちゃんと聴いてくれる。自分の気持ちをわかってくれる」と思ってもらえるのです。

うれしいこと、楽しいこと、悲しいことや辛いこと、話題がポジティブでもネガティブでも、相手の世界観に共感できると、お互いの心の距離感がグッと縮まります。

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