最高裁が旧統一教会への解散命令請求を“認める”前触れ

この判決はとても大きな意味を持ちます。

なぜなら、教団側が「裁判時に返金請求をしない」といった念書や合意書を高額献金者に署名させるケースは他にもあり、組織的に指示をした疑いを持たれているからです。実際、教団は布教・物品販売において、マニュアルを駆使しての組織的な指示を行ってきた過去があり、この件もその一環と考えられています。

末端の信者による勝手な行動ではなく、教団による「組織的」な企て。それは元「中の人」である筆者も嫌というほど知っています。

例えば、教団の正体隠しの伝道の「勧誘マニュアル」です。ここには「命がけ笑顔」で街頭の人たちに、どんな状況下でも必死に声をかけることや、教団名を隠したビデオセンターに誘う時には架空の団体を名乗り、「言葉は何でも構わない」と嘘をつくことを推奨する文言も記載されています。

今回の最高裁で元信者だった母親の献金した額は1億円以上。他にも巨額の金銭的被害を受けた人が多いのですが、教団は金を集める時にどんなマニュアルによって指示してきたのか。その裏舞台を暴きたいと思います。

筆者の信者時代、教団は霊感商法で着物や宝石、絵画などを、ホテルなどを借りての展示会形式で販売していました。1988~89年にかけて、教団の青年支部に、勤労青年(働きながら、教団の活動をする信者)として所属しており、その時に、アベル(教団の上司)から講話の形で聞いた内容をメモ書きしたノートが手元に残っています。それは筆者自身が教団に対して起こした民事裁判の時にも提出して、東京地裁にて勝訴判決(2002年8月)を得る証拠の一つにもなっているものです。

展示販売会を行うにあたって、幹部信者や代表者らが責任者をつとめる販売会社から、信者社員が私たち末端の支部にやってきて、どのような手順と心構えで、会場に知人、友人などを連れてきて、販売するのかを話しました。

展示会動員のことが記されたページには「ART啓蒙・担当者教育」のタイトルがついています。ARTとは絵画のことで、「四位基台」と題された図があります。

父のところは「AD(アドバイザー)」となっていて、「ディレクター」の指示を受けて、絵画の説明・販売をします。母の立場には「担当」とあり、これが展示会に連れ込む、私たち末端の信者たちになります。さらにその下には、子供の立場として「ゲスト」と記載されており、絵画の展示館会場に誘い込まれる知人、友人たちのことです。

担当者のなすべきことに、神への「祈り」とともに、「報連相(報告・連絡・相談)」と書かれています。教団は販売契約の効率性をあげるために、常に(内部で指示を出す)ディレクターに、連れ込んだゲストの状況「購入を勧めている絵が気に入っているか否か」などを逐一、報告しなければなりません。