「60歳で年金」という社会構造も大きく変わる

すでに、2020年の段階で、高齢独身人口は約1374万人です。ほぼ東京都の人口と同規模の高齢独身者が存在していることになります。これが2050年には1800万人を突破することになりますが、前述したようにこれは楽観的な希望を含む中位推計なので、実際はもっと増えることになるでしょう。

独身者が増えるということは、すなわち世帯の構造も大きく変わります。

1970年代は、核家族の時代でもあり、「夫婦と子ども2人」が標準世帯と呼ばれた時代ですが、その頃の「夫婦と子世帯」の割合は全体の43%を占めていました。しかし、2020年には25%へと減り、2050年には22%を下回ることになります。

反対に、単身世帯は、1975年は2割以下でしたが、2010年には「夫婦と子世帯」を抜き、世帯類型別のトップになった以降も増え続け、2020年は38%、2050年に44%へと伸長します。ちょうど、「夫婦と子世帯」と「単身世帯」とが80年間で対称的に入れ替わることになります。

この人口や世帯の構造変化は、持続的な社会保障の観点からは深刻な問題もはらんでいます。かつては、60歳からは年金を受給して、悠々自適な老後生活が送れたものでしたが、それは高齢者人口が少なかったからです。人口構造が昭和とは大きく変わったわけで、今まで通りのやり方は通用しません。

逆三角形の人口ピラミッドは長方形型に変化

今後、高齢者が増えること、さらに高齢の独身者が増えることは不可避です。しかし、それは決して予想もしない未来ではなく、現段階でも十分予測可能な確定された未来である以上、その適応戦略を今まさに考えるべき時となっています。

2050年頃に独身人口が最大化するといいましたが、それが未来永劫続くものではありません。〈「1人生まれても2人が死ぬ」が50年続く…ついに始まった「日本人の大量死」の行き着く先とは〉という過去記事にも書いた通り、2022年から日本は多死時代に突入しています。

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高齢者を中心とする死亡者年間150万人以上が最低50年間続く「多死50年時代」になります。が、それは、それまでの長寿化による「少死50年時代」があったからこその必然の結果です。

見方を変えれば、今から50年間は、人口構造が入れ替わる過渡期にあたり、高齢の独身者が増えるといっても、高齢独身者だらけの国になるわけではありません。日本の人口ピラミッドは、現在高齢者の多い逆三角形という歪な形をしていますが、「多死50年時代」を経て、これがどの年齢帯もフラットな長方形型に移行することになります。

だからこそ、今からの50年間をどうしのいでいくか? が重要になってきます。