徐々に「婚活がつらい」と感じるようになっていった

「ご辞退って……」と私がつぶやくと、近くにいた成人した娘が振り返る。一部始終を話すと

「つまり、これまでの婚活パーティではお母さんをいいなと思ってくれる人がいたけど、毎回お母さんのほうが拒絶した。今度はバーでの婚活パーティも、今日のお見合いも、向こうから拒絶されたということだね」と分析される。 

7月から婚活を始めてこの時点で4か月――徐々に活動を続けることがつらいと感じるようになっていった。そんな時、『孤立不安社会 つながりの格差、承認の欲求、ぼっちの恐怖』(勁草書房)を読んだ。そこには<(婚活で)活動不調に陥った人は、その胸に「承認を拒否された人物」としての烙印を刻みこみ、アイデンティティを著しく動揺させる>とある。まさに今の私だ。著者である早稲田大学文学学術院の石田光規教授に詳しく話を聞きたいと思い、インタビューを申し込んだ。

石田教授によると「婚活はトーナメント戦と同じ」だという。

「職場をはじめ、サークル、ボランティアなど定期的に〝場〟に行く機会がある場合は競わなくてもいいですよね。ところが婚活ではリアルパーティでもアプリでも、まずマッチングするか、そして2回戦といえる1対1で出かけるところに進めるかを競う。さらにその次の約束に取り付けられるか、ということを繰り返さなくてはならないんです」

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「人工的な出会いからの結婚」はさらに増えていく

婚活を始めた当初は、男女どちらも前向きな姿勢で「きっと出会える」という期待感がある。ところが何度やってもうまくいかない人は自分の存在自体を否定されたように感じて挫折し、仮に順調にマッチングして進める人でも「別の誰かと会っている可能性」を疑い、ストレスが大きくなりやすいという。

出会いの場を提供する結婚相談所や婚活パーティ、マッチングアプリなどのサービスを「関係づくりビジネス」と称する。

「政府が孤立死対策を始めたのは2007年頃です。その少し前からメディアで〝団地の一室で一人で死を迎える〟というような孤独・孤立の危険が指摘されるようになりました。このままでは自分も一生一人かもしれないという人々の危機感を煽り、活動して結婚をしようとなったわけです。そして婚活という自由市場ができてしまった」(石田教授、以下同)

今後こういった〝人工的な出会い〟を通した結婚は増えていくのではないか、とみる。

「なぜなら、今の若い人たちは告白自体をリスク要因と捉えるからです。例えばゼミの中にちょっといいなと思う子がいたとしても、告白してうまくいかない時、また付き合えたとしても別れてしまった時に気まずさが残るでしょう。今はそういう空気をとても気にする時代なんですね」