開催前に絶対に見るべき70年代の「万博映画」
万博にちなみ、最後に『公式長編記録映画 日本万国博』(1971年 谷口千吉監督)という映画をおすすめしたい。
2025年の万国博覧会開催を前に、その55年前に開催された1970年の大阪万博(EXPO'70)が再び注目を集めている。
千里丘陵で開催されたアジア初の万博は、開催半年の間に6000万人以上が集まる歴史的なイベントとなった。本作はその準備から開幕そして閉幕までを追ったドキュメンタリーだ。半世紀以上前の人々の様子や当時の社会風俗を知るにも格好の素材である。
ナレーションは石坂浩二。特撮番組のウルトラQやウルトラマンでのナレーションでも知られ、映像とともに音声でも昭和を感じさせる。
半世紀前の人びとが描いた未来がじつに興味深い。抽象的、流線形、カラフルな建築物が50年前の人が考えた未来だったのかと、今から見ると微笑ましい。その中で、東京ドームそっくりの建築物があるのに驚いたりもする。
半世紀前の日本の熱気を感じる
各国が1つずつパビリオンを出していたと思っている人が多いかもしれないが、スカンジナビア館はデンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの5カ国で共同出展されていた。展示品は公害の実態や環境保護を訴えるもので、当時から北欧諸国では環境問題を重視していたことが見て取れる。
当時の日本では四大公害が世間を騒がしており、公害問題はすんなりと受け入れられたと思われるが、環境問題については、まだほとんどの人が意識していなかったのではないか。万博のテーマが「人類の進歩と調和」、時は高度成長の末期とあれば環境保護よりも経済発展に目が行くのは当然で、その意味では北欧らしいと言える。
2時間53分の映像は、今の時代では考えられないような状況も映し出している。閉会式で各パビリオンのコンパニオンたちが、観覧席に座る当時の皇太子夫妻(現上皇・上皇后)に手を伸ばして花を差し出し、それを夫妻が受け取るという距離の近さなどは、警備上の問題からしても、今ではできない相談である。
2025年の万博はおそらくかなり洗練された大人のエキスポとなるだろう。半世紀前の日本が先進国入りした当時の熱気を感じるには、格好の素材、記録映画と言える。万博が開催される前にぜひ見ておきたい記録映画である。