3.信託期間が有期限の投資信託
かつては信託期間を無期限にしている投資信託が結構あったのですが、最近は追加型投資信託なのに、当初の信託期間を10年、あるいは5年程度にするものが少なくありません。
これには理由があります。それは純資産総額が小さいまま運用を継続せざるを得ない状況を回避したいからです。
前述したように、純資産総額が小さい投資信託は、投資信託会社にとって赤字要因でしかないので、できれば早々に繰上償還させたいところなのですが、それを簡単に許してもらえない事情もあります。それは販売金融機関の都合であることが多いです。
信託報酬は投資信託会社、信託銀行、販売金融機関の3者で分け合うことになっているので、販売金融機関にとって信託報酬は、ほとんど労力をかけることなく入ってくる継続的な収入です。だから、たとえ少額だとしても失いたくないので、繰上償還に反対の立場をとりがちです。その結果、なかなか繰上償還が進まず、純資産総額が1億円程度の投資信託がたくさん残されているのです。
「信託期間が満了しました」という理由があれば、販売金融機関に文句をいわせることなく、償還することができます。
投資信託を育てるつもりがあるのか
つまり、信託期間を有期限にしているのは、経営面で赤字要因でしかない、純資産総額の規模が小さい投資信託を少しでも減らすための、投資信託会社にとっての苦肉の策であるともいえそうです。
もちろん、投資信託会社としては、5年、あるいは10年程度で運用を終わらせようとしているつもりはないと思います。投資信託の信託期間は延長が可能だからです。仮に当初信託期間が5年だとして、その期間が終了する直前の純資産総額が大きくなっていたら、そのまま約款を変更して、さらに信託期間を5年間延長させることも可能です。
しかし、だからといって信託期間を短くするのは、何の努力もせずに言い訳をしているだけのようにも思えてきます。
本来、純資産総額がなかなか増えないのであれば、それを増やす努力をすべきです。1本の投資信託にそこまで手間をかけられないという声も、投資信託会社の側にはあるのかもしれませんが、だとしたら、なぜ1本の投資信託を大事に販売し、かつ運用することができないのか、という点を改めて考えるべきでしょう。
大概の投資信託会社には、販売金融機関の意に沿った投資信託を組成してきたという歴史があります。信託期間を有期限にするのは、1本の投資信託を大事に育てる意思がないことを露呈しているかのようにも思えてきます。