年収800万円だと、可処分所得が月783円しか増えない
結論から述べますと、税負担のほうが大きくなる世帯は、おおよそ年収1200万円の人がボーダーラインとなりそうです(※)。ただし、それ以外の世帯でも、児童手当が額面通りに家計に入らず、可処分所得はそれほど増えない可能性があります。
具体的にみてみましょう。
年収が500万円の人の場合、扶養控除が廃止されると、5万2400円の負担増となります。児童手当は12万円(1万円×12カ月)支給されますので、+6万7600円です。月5600円程度の可処分所得の増加です。
年収が600万円の人は、扶養控除廃止による負担増が7万1800円で、児童手当との差額は+4万8200円。
年収750万円の人は、扶養控除廃止の9万9000円の負担増で、差額は+2万0100円。年収800万円の人は、11万0600円の負担増で、差額は+9400円となります。つまり月783円しか可処分所得が増えないということになります。
年収1200万円を超えると、負担増が12万2200円となり、支給される児童手当分を超えて、2200円の損となります。つまり、所得制限が撤廃されて児童手当が支給されることになるこの年収層にとっては、もし高校生がいる場合、かえって可処分所得が減ってしまうことになるのです。
年収1500万円を超えると、負担増が16万1000円で、児童手当との差額は−4万1000円です。
所得税は年収が高いほど税率が高く、控除廃止の影響を受けやすくなります。
扶養控除の廃止は決定ではありません。縮小もあり得ます。
ただ、扶養控除は現行のまま維持したうえで、児童手当を支給しなければ、少子化対策としての効果は薄まるように思えます。
(※)各種の控除によって、負担増のボーダーラインは前後します。たとえば、控除が基礎控除や配偶者控除・扶養控除のみであれば、年収800~900万円の人が負担増になる可能性があります。ただし、所得の高い人は、多くの場合で、協会けんぽなどの社会保険料、生命保険料控除(最大4万円)を給与所得から控除しています。本稿ではそれに基づいて、ほぼ現実に近い形で試算しています(医療費控除やふるさと納税などを行った場合は、ボーダーラインとなる年収はさらに高くなります)。