人口減少は少子化ではなく、高齢者の多死化で進む
しかし、2007年以降は連続で死亡数が出生数を上回りました。2022年は、死亡数が過去最高記録ならば、出生数も過去最低となり、ふたつの指標の差分である自然減がもっとも多くなった年です。
社人研の推計では2120年までしか出ていませんが、この傾向は2200年頃まで続くでしょう。多少の出生数が増加したところで、それを逆転することはできません。つまり、今後200年近く日本人の減少は止まらないということになります。人口減少とは少子化によって起きるのではなく、今後はこの多死化によって起きるものなのです。
人口転換メカニズムというものがあります。これは、「多産多死」の状態から、医療などの発達によって乳幼児の死亡が減ることで「多産少死」の時代になり、さらに、乳幼児が死なない事で多産する必要性を軽減し、「少産少死」の時代に移行します。
そして、「少産少死」の時代によって高齢化が起き、その後には、増加した高齢者群が順番に寿命を迎えることによる「少産多死」時代が必ず到来します。最初の「多産多死」時代は、主に乳幼児の死亡が多いのですが、最後の「少産多死」時代はほぼ9割以上が高齢者の死亡となります。
日本各地の人口動態は世界の縮図
これは日本に限った話ではありません。国連の人口統計(World Population Prospects 2022)によれば、世界のほとんどすべての国と地域が同じ推移を辿ります。1950年時点では、アフリカ諸国などの途上国はまだ「多産多死」ステージにいましたが、2015年時点では、多くの国が出生率が下がるとともに死亡率も下がる「少産少死」に移行しています。
そして、2100年推計では、出生率は低いまま、死亡率だけがあがるという「少産多死」ステージになっていきます。日本はすでに世界に先駆けてそのステージに突入しているのです。
同じ傾向は、日本国内においても相対的に見られます。都道府県別での長期推移をみれば、戦後まもなくの1947年はまだ日本も乳幼児死亡率が高く、子どもの死亡が多い、いわば「多産多死」ステージにありました。第2次ベビーブーム直後の1975年が、日本ではもっとも死亡率が低かった時代です。死亡率は人口比ですから、この時期が対人口当たりの死亡がもっとも少なかったということです。
そして、2022年には全都道府県が揃って出生率が下がり、死亡率があがるという「少産多死」へ移行しました(図表2:出生率・死亡率ともに単位は人口千対)。