「授乳中にスマホ」が与える深刻な影響
「そこまで子どもをスマホ漬けにした覚えはない」と多くの親は否定するでしょう。
しかし、私は街中で幼い子と手をつないで歩いている親が、子どもではなくスマホの画面を見ているという場面にたびたび遭遇します。
また、ベビーカーを傍らに停め、自分は公園のベンチに腰かけてスマホに夢中といった親もいます。せっかく一緒にお散歩に出かけても、子どもへの関心や安全への気配りはどこかに行ってしまったようです。
じつは、子どものスマホ使用以前に親がスマホをいじりながら子に接する「ながら子育て」は、子どもの脳の発達に悪影響を与えます。
保健所の保健師さんたちに話を聞くと、乳幼児健診の現場で赤ちゃんの顔をまったく見ず、授乳しながらスマホを見ているお母さんがいるというのです。これには私も唖然としてしまいます。
生まれたばかりの赤ちゃんは、目の細胞が未発達で30cm程度の近い距離にしか焦点が合いません。この30cmというのは、じつは赤ちゃんがおっぱいを飲みながら見つめる母親の顔との距離なのです。
「心の安全基地」が持てず不安になる
赤ちゃんはお母さんと目と目を合わせることで安心し、親子の愛着関係が生まれます。これは、哺乳瓶で赤ちゃんにミルクを飲ませるときも同じです。もっとも、哺乳瓶を持っていればさすがにスマホは持てないでしょうから、これなら、むしろ母乳よりもよいのではないかとさえ思ってしまいます。
このようなわが子の心を育てる大事な時間に親がスマホをいじっている。そうすると子どもは愛着形成がされず「外の世界で何があってもここに戻ってくれば大丈夫」という、心の安全基地を持つことができません。
その結果、ストレスに弱い、イライラしやすい、不安や抑うつになりやすいといった問題がおこる可能性が高まります。
こういった子どもの感情障害に、スマホ使用が深くかかわっていることに多くの大人たちは気づいていません。子どもに気軽にスマホを渡すばかりか、自分たちがスマホを使いまくっているという状況です。