思考法には“じゃんけん”のように相性がある
私が意識している思考法は主に3つあるのですが、それぞれの大まかな定義は次の通りです。
「事実」や「論理」に注目した思考。どんなときでも使えるぐらい汎用性が高いが、目的や前提を見失うことがある。
・そもそも論
「前提」と「長期的な価値」に注目した思考。本質的な価値を見失わないのがメリットだが、具体性が欠けることがある。
・アナロジーシンキング
「認識」や「効果」に注目した思考。比喩を多用する。実用性が高いが、一部の事実のみを切り取り、ミスリードを起こす可能性がある。
いずれか1つの思考法ではなく、これら複数の思考法を組み合わせると、思考を深めることができます。私はアンカーマンとして数多くのメディアに携わってきたのですが、インタビューする際には異なる思考法の質問を投げ掛けるようにしてきました。
まずは相手の軸足となる思考法を見つけ、それとはズラした思考法の質問をぶつけるのです。思考法の関係性は「じゃんけん」に近いイメージだと私は考えています。勝負ではありませんが、相性の良し悪しがあるということです。「論理的思考」が強い人には「アナロジーシンキング」をぶつけ、「アナロジーシンキング」が強い人には「そもそも論」を、「そもそも論」が強い人には「論理的思考」をぶつけると、思考が深まっていきます。
著名人や財界人の方とお話ししてきた対談記事を多くの方に読んでいただけたのは、思考法をバランスよくまわし、考え方や会話を深めることができたことが大きな要因だと思っています。
「論理的思考」だけでは差別化の要因にはならない
書店の棚を見れば一目瞭然ですが、山ほどの「論理的思考」に関する本が並んでいます。それはつまり、多く人が「論理的思考」を求めているという証拠です。「論理的思考」が一般化しつつあり、周囲を見渡しても、論理的に考えられる人はたくさんいます。つまり、ロジカルに考えられる「論理的思考」だけでは差別化の要因にはならないのが現状です。
今は、差別化するためには思考法を組み合わせることがいっそう重要になっていると思います。アンカーマンは異なる思考法の質問を投げ掛けて思考を深めていきますが、思考能力が優れている人はそれを単独でも完結できます。
自分は「論理的思考」で考えるのが癖になっていると思えば、「アナロジーシンキング」でも考えることを意識してみてください。「アナロジーシンキング」が軸になっているなら、「そもそも論」で、「そもそも論」が強ければ「論理的思考」で考えるように習慣化してみましょう。最低でも「もう1つ思考の軸」を持つことができれば、1人だけでも思考が深められるようになります。
そうすれば自ずと、会議などでの発言(思考)も一目置かれるようになるはずです。