師範にまで登り詰めたセガールほどの熟練者となれば、精神面でも常人の思考を超えた心得を習得していてもおかしくない。受け身の基本のごとく、やみくもな対立をよしとせず、いかに相手の勢いを利用して制圧に転じるか。このような達観した視点が期待されよう。

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残念ながら、日本で合気道を極めたセガールは、その心得を出国と同時に置いていってしまったようだ。アメリカでは女性へのレイプやセクハラ疑惑が相次ぎ、証券委員会からは巨額の罰金の踏み倒しを追求されるなど、不祥事が次々と発覚している。

ここ数年は、一部反米国やロシアとの癒着も目立つ。プーチンと接近しロシア国籍を取得したほか、ウクライナ侵攻に関しロシアを支持する発言すら行っている。92年、『沈黙の戦艦』でテロリストから米海軍の戦艦を奪還しようと奮闘した銀幕のヒーローは、映画公開から30年を経て、ロシアの広告塔に成り下がってしまったようだ。

映画俳優として順風満帆だった

88年に『刑事ニコ/法の死角』でスクリーンデビュー、92年の『沈黙の戦艦』でスターダムへ駆け上がったセガールは、その後も沈黙シリーズを中心にコンスタントな映画出演を続けている。2016年には出演作7本が一挙公開。2019年にも沈黙シリーズの新作が2本封切りとなるなど、好調なキャリアを歩んできた。

俳優としては素晴らしい実績を残したかに思えたが、近年の不可解な行動がアメリカをざわつかせている。不正に仮想通貨の宣伝を行ったとして米証券取引委員会(SEC)に起訴され、巨額の制裁金を課された。

セガールは2018年、仮想通貨の取引所が立ち上げた新規仮想通貨(トークン)について、自身が報酬を受け取っていることを明かさずに広告を行った疑いがもたれている。日本でもたびたび問題になる「ステマ」行為だが、炎上だけでは済まなかった。

同トークンが証券とみなされたことでSECの監査対象となり、違法行為と認定されたためだ。そもそも同トークンの立ち上げキャンペーンはかなりグレーなものであり、ネズミ講まがいとの批判も各メディアから寄せられていた。

もうアメリカには戻れない

セガールは新規トークンの立ち上げに際し広告活動を担い、現金とトークン合わせて100万ドル相当(現在のレートで約1億3800万円)の報酬を秘密裏に受け取っていたとして、SECから多額の制裁金を課されている。