大会側は雪山の斜面に干し草を敷き詰めて融解を防いだり、谷からヘリで雪を空輸したりといった対策を迫られた。4年後のロシア・ソチも同様に雪不足にさいなまれた。CBCによると、雪の90%を人工雪でまかなっている。

各都市が雪の確保に苦心するなか、札幌は候補都市として非常に貴重な存在だ。同局は、カナダ・ウォータールー大学のダニエル・スコット教授(地理・環境管理学)が率いる国際チームによる研究結果を報じている。

それによると世界の開催候補都市は、今世紀末までに2~4.4℃の気温上昇にさらされる見込みとなっている。結果、「温暖化ガスの排出量を地球規模で劇的に削減しない限り、冬季五輪を安全かつ現実的に開催できるのは今世紀末までに、過去21回の開催地のうち日本の札幌だけとなる」ことが判明したという。

東京都にある日本オリンピックミュージアム前に設置されたオリンピックシンボル(写真=RuinDig/Yuki Uchida/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

東京五輪の汚職で招致活動は「一時停止」に

このように重要な候補都市である札幌だったが、昨年から噴出した東京五輪をめぐる汚職疑惑により、開催は急速に難しくなりつつある。ロイターは昨年12月、札幌市と日本オリンピック委員会が招致活動の「一時停止」を表明したと報じた。

汚職の渦中の人物は、大会組織委員会の高橋治之・元理事だ。元理事は、大会のスポンサー契約などをめぐり、紳士服大手AOKIホールディングスや出版大手KADOKAWAなど5つの企業から総額約2億円の賄賂を受け取ったとして受託収賄の罪で、東京地検特捜部にこれまで4回起訴されている。

スポンサー料の金額や交渉内容は機密性が高く、オリンピック組織委員会のなかでも取引の実態を把握していたのはごく一部に限られる。こうした密室での商談が贈収賄を行いやすい環境を形成したとの指摘がある。

東京五輪を取り巻く状況は、汚職発覚以前から非常に厳しかった。開催の6年前の2015年にはすでに、大会公式エンブレムがベルギーの劇場のロゴに酷似しているとの指摘を受け変更を迫られている。

その後も、パンデミック下で示された開催強行の方針、土壇場での1年延期、新国立競技場のデザインをめぐる混乱、組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言と辞任劇、閉会式の演出チーム内での不和疑惑など、スキャンダルは枚挙にいとまがない。

それでもひとたび開催にこぎ着けると、選手の奮闘が国民の関心を呼び、大会に関して建設的なムードが醸成された。だが、回復の兆しがあった組織委員会の名誉に、一連の汚職疑惑が致命的な泥を塗った形だ。