「俺はもう真面目に稼いでますから」と語るが…

「かけ子はきついからもうやらない」

数々の特殊詐欺の現場を踏んできた木村は、淡々とした口調で語る。

「かけ子をやることを『ハコヅメになる』って言うんですけど、短期間でも数週間は拘束されるし、やっぱり高齢者を騙すので、普通に心が痛みますよ」

田崎基『ルポ特殊詐欺』(ちくま新書)

かけ子をやった3カ月間で数千万円規模の被害を生み出し、約500万円の報酬を手にしたという木村。かけ子の罪では木村に捜査の手は及ばなかったが、その時に直接の実行犯として動いた「受け子」と「出し子」が逮捕された。

「知り合いでもない受け子だったので、別になんとも思いませんけど。ただ、最近は末端が次々と逮捕されてしまうので、一番、二番が決まりにくくなっています。人が確保できなくて、案件が刺さっている(騙された人はいる)のに、流れる(実行できない)ケースも少なくありません。売上(被害額)は確実に落ちてるので、別の稼ぎ(詐欺)が生まれるでしょうね」

どこか他人ごとのように話し、「俺はもう真面目に稼いでますから」と笑う木村。その手は、3台のスマホを器用に操っていた。合計7台を「いまは」使っているのだという。自分名義のスマホは1台で、ほかは全て他人名義の「飛ばし携帯」か、プリペイド式のSIMカードが入れられているスマホ。会話をしながらも指先は絶えず動き続け、「誰か」とのやりとりが途絶えることはなかった。

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