社会で一人ぼっちにならないために、できること

もちろん、障害のせいで、どう努力してもできない、わからないことはあります。それを無理やりさせるつもりはありません。

だけど、良太ならきっと、そのルールがわかるはず。社会で一人ぼっちにならず、生きていくための学びを何かしら得てくれるはず。私は、これまでの成長を見ていて、そんなふうに信じていました。

学校に対してやってほしい、というお願いだけではなく、子どもにこうなってほしいから、という理由も一緒に伝えると、ありがたいことに、先生たちは深く理解をしてくれました。

中学年以上になると、良太も勉強にはついていけなくなります。わからない授業も出てきます。そんな時、先生は、国語の時間でも良太には特別に簡単な他教科のプリントや、集中力が切れそうになったら大好きな塗り絵ができるように考えてくれました。

同じクラスの子どもたちにも、その理由を説明して。先生たちには本当に、感謝しています。先生のおかげで、良太のあとに入った障害のある子どもたちは、嬉しかったことがきっといくつかあったんじゃないかなと思います。

普通学級の子どもたちと、ルールを守りながら一緒に過ごす時間が長かったおかげか、遠足の班分けでも、修学旅行の班分けでも、良太が余ってしまうということはありませんでした。先生がなにも言わなくても「きっしー、一緒に回ろうよ」と誘ってくれる子どもがいてくれたそうです。それを聞いた時はとても嬉しかったです。

サッカーのスローインが得意だった

休み時間も、良太は1人ではなく、友達と遊んでいました。

なにをしていたかというとサッカーです。その当時、サッカーは子どもたちに絶大な人気がありました。サッカーをやっているというのは、人気者になる一歩かもしれない……と貪欲な私はそう思い、良太がもし気に入ってくれれば、と地元のサッカークラブへ行ってみました。

良太はサッカーにはまり、コーチや他の子どもたちも喜んで歓迎してくれました。だけど、高学年になると、サッカークラブの活動は試合が大半になってきます。子どもといえど、試合は真剣勝負。足も遅く、機敏に動けない良太を試合に出すと、チームは負けてしまいます。

良太の出場回数はグッと減り、それで良太もすねてしまいました。つらいですが、仕方がないことだなと半ば諦めていたら、ある時から、良太が試合に出るようになったのです。なんと、ボールを投げてコートに入れる、スローインのピンチヒッターとして。

コーチが言うには、子どもたちが提案してくれたそうです。

「きっしーはスローインはめっちゃ上手いから、やってもらおうぜ」

これはお世辞ではなく、本当に良太のスローインは正確で、上手かったのです。子どもたちは本気で勝利を目指していました。その過程で、良太を仲間に入れてくれたということに、私は感激しました。良太も誇らしそうに、両手でボールを投げ入れます。

誰より驚いていたのは、コーチでした。

「子どもたちが持つ力、考える力が、こんなにも凄いなんて……」

大人が言うべきかどうか迷っていた壁を、子どもたちはなんなく打ち壊してくれました。余談ですが、コーチはこの時の経験があまりにも衝撃で、子どもたちともっと触れ合う仕事に就きたいと、小学校の教員になられました。