「自分で考えた」意見を発信しよう
もう少し具体的な話をしましょう。まず、誰もが放射線問題について正しい知識を持つことが重要です。放射線の物理的性質や健康への影響はもちろん、国際的なルールや日本の施策についても正確に知ってほしいと思います。この連載ではそのための情報を提供することに徹してきました。
そのうえで――これが一番大切だと思うのですが――、個人個人が自分の意見を持ってほしいと願います。自分自身で十分に考えたしっかりとした意見を持ち、外国人と接する中でその話題が出るごとに、意見を示し、議論をしてみてください。その過程で、相手の誤解や偏見を解くこともできますし、何よりも日本人が放射線問題に正面から取り組んでいることを示す価値は大きいと思います。
昔、医学部を出たばかりの研修医だった短い夏休み、湾岸戦争(1991年)勃発直前のオーストラリアの片田舎を旅行していました。パブで知り合った農夫が何気なく語り始めた湾岸戦争に対する意見に私は衝撃を受けました。深い造詣、そして、その戦争がオーストラリアの農業にどう関係すると思うか、滔々と語る彼に私は嫉妬しました。そして「で、君の意見はどうなの?」と水を向けられ、私は自分が湾岸戦争と日本の関係をとうてい述べられないことを恥じました。
それ以来少しずつではありますが、何においても自分の意見を持つことに努力をするようになりました。同じような経験をされた読者の方は多いのではないでしょうか。国際情勢や経済政策など、今までビジネスマンの皆さんが世界の仲間と雑談してきた話題と同じように、放射線問題もこれからは普通の話題の一つになっていくのだろうと思います。
オーストラリアの農夫と会話を交わした頃からおよそ四半世紀が経ったわけですが、今こそ、日本人ビジネスマンが日本の復興や放射線問題について海外に発信することの大切さを心に刻んでほしいと思います。
“The radiation problem must be long-lasting, but we have been tackling this problem. Actually, ...”
皆さんがこの問題を世界のあちこちで発信してくださることを切に願いつつ、本連載を締めくくりたいと思います。