3.関係性(Relationship)のデザイン
原則3:FCでは、集まった人たちの関係性を大切にすることで、効果的に自発性を引き出す
関係性を大切にしていることを表現するためには、「お迎えの仕方」が大切になります。オランダのフューチャーセンターを訪問した際に、カントリーハウスとシップヤードという2つのフューチャーセンターで共通して体験したのが、フューチャーセンター・ディレクター自らが出迎え、玄関脇のウェルカムルームでお茶とお菓子が振る舞われたことです。その小さな部屋に通され、ディレクターとゆっくり話をしているうちに、友人の家に遊びに来たような、あるいはペンションに泊まりに来たような、リラックスした気持ちになりました。「ここでは問題解決より先に、人間関係を大切にしているのだ」ということが、深く心に刻まれました。
このことには、フューチャーセンター内のデザインやアート、飾られた花なども一役買っています。フューチャーセンターのスタッフの顔写真をすべて壁に貼っておきましょう。過去の来場者や、フューチャーセンター・セッションの写真も壁に貼っておけば、あたかもソーシャルネットワークが可視化されたような効果があります。
4.全体性(Wholeness)のデザイン
原則4:FCでは、そこでの共通経験やアクティブな学習により、新たなよりよい実践が創発される
フューチャーセンターは、そこに来た人たちが、お互いの間に壁を感じることなく、全体で一つの場をつくれるようデザインされるべきです。想像してみてください。最初に到着した人は、どこで時間を過ごすのでしょうか。逆に、すでにグループができてしまっているところに、誰も知り合いのいない人が到着したときに、どのように仲間に入ってもらえばよいでしょうか。知らない人同士でも、気軽にアクセスできるカウンターがあり、そこに香り豊かなコーヒーでもあれば自然に会話が始まることもあるでしょう。
セッションが始まってからも、講演会スタイルが続いてしまうと、他の参加者と誰とも話をしないで帰る人が多くなってしまいます。2人や4人といった少人数での対話の機会を作ることによって、逆に、全体性を感じさせることになるのです。
皆で一つのトピックについて話すことや、皆で一つの絵や表を完成させることも、全体性を感じる体験でしょう。もしかすると、その日に偶然出会った人もたくさんいるかもしれませんが、皆で一つの協同作業を行うことで、「今日ここに集まった人たちが、社会を変える同志になるかもしれない」と感じることができたならば、それは素晴らしい場であったという証明になります。