TPPは当初、シンガポール・ブルネイ・チリ・ニュージーランドの4カ国で始まり、その後、ベトナム・オーストラリア・ペルー・マレーシア・米国の5カ国が加わって、現在は9カ国での交渉が進められている。日本の交渉参加は、後発にもかかわらず影響力の大きい米国の議会承認を必要とする。
とはいえ、日本が加盟すれば日米だけでGDPの約9割を占めるため、その巨大市場が拒まれる可能性は低い。特に国の屋台骨が揺るぎ始めたとまで囁かれる現在の米国では、次の大統領選を意識するオバマ大統領が、到底実現できそうにない「輸出倍増計画」を打ち出したため、是が非でも日本の市場を組み入れなければならないのが実情だ。
その要請に応えるように、野田佳彦首相は11年11月にハワイのホノルルで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と宣言した。すでに「米韓FTA」を締結していた韓国は11月末、「野田宣言」に刺激された李明博政権が反対派を抑え、強行採決でついに条約を批准。「宣言」前の日本も米韓FTA締結に刺激された面があり、互いに「取り残される」と騒ぎ合って、それが両国推進派の勢いを強めた。
しかし、日本ではTPPへの交渉参加に反対する世論が徐々に高まりつつある。
「TPPは日本経済を滅ぼす」という見方が具体的な情報と分析で急速に広まり始めたからだ。
※すべて雑誌掲載当時