ひとり暮らしをする高齢女性の幸福度は高い

これに対して、「独居高齢女性は(家族と暮らす場合に比べて)幸福度が高くなる傾向がある」ことがわかっています。

この理由は家事負担からの解放です。

日本では性別役割分業意識が依然として強く、女性に家事負担が偏りがちです。ひとり暮らしだと他の家族の家事負担もなく、気兼ねなく生活できるため、幸福度が高まるというわけです。

また、女性の場合、男性よりも家庭外での交友関係が広く、孤立化しにくいといった点も影響しています。

松浦准教授らの分析では、独居高齢女性と独居高齢男性の幸福度の比較も行っていますが、女性の幸福度のほうが高いことを明らかにしています。

ひとり暮らしの高齢女性は、相対的に幸せに暮らしているようです。

近年、高齢者の独居世帯が増加していますが、女性のほうが男性よりも平均寿命が長い点を考慮すると、相対的に幸福度の高い高齢独居女性の比率が高くなっている可能性があると考えられます。

ただし、高齢者世帯でも貯蓄や所得が幸福度に大きな影響を及ぼすため、安定的な経済基盤の確保が課題として懸念されます。

未婚の子と同居する高齢者は幸せなのか

次に、日本において増えている「未婚の子とその親」という世帯について見ていきます。

国民的テレビアニメである『サザエさん』のように、子夫婦と同居する親といった居住形態は、今では少なくなっています。

ここで気になってくるのは、「増加する未婚の子との同居が高齢の親にどのような影響を及ぼすのか」という点です。

はたして未婚の子との同居は、高齢の親に幸せをもたらすのでしょうか。

未婚の子と同居するメリット・デメリット

未婚の子との同居にはメリットもあれば、デメリットもあります。

まず、メリットとして挙げられるのは、同居している子から提供されるさまざまな生活上の支援です。

親に代わって子が日常生活の買い物や重い荷物の持ち運び、農作業、車の運転等を行ってくれることが考えられます。これ以外にも、親の健康状態が悪化した際、家庭内の介護の担い手として活躍することも考えられます。

これに対してデメリットとして挙げられるのは、家族という近い関係の中で発生するストレスや子への経済面での支援です。

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同居という形をとっている以上、親子間でのコミュニケーションがあるわけですが、その中でさまざまなストレスがたまる可能性があります。また、経済的な理由から親との同居を選択している子世代の存在も考えられます。いわゆる「パラサイトシングル」であり、これも親の経済的負担となっている可能性があります。

以上のメリットとデメリットの大小関係によって、未婚の子との同居の影響が決まってきます。メリットのほうが大きければ、未婚の子との同居は幸福度を高めるでしょう。しかし、デメリットのほうが大きければ、未婚の子との同居は幸福度を押し下げる要因となります。

はたして実態はどちらなのでしょうか。