まず相手に対する関心を示す

今やスキルを磨いてどんどんキャリアアップしていくのは常識で、そうでなければ国際的にも競争に勝てません。“石の上にも三年”は、もう時代遅れの常識なのです。

ラングリー・エスクァイア社長 ティモシー・ラングリー氏

それでも、あなたが現在の職場の人事制度を変えることはできません。もし、古い体質の会社に所属していて、早く評価を高めたいならどうするか。まず前提としてあなたのスキルが、会社の求めるスキルであることが必要です。

そのうえであなたは自分のバリューを示さないといけないわけですが、職場で「私はこんなにできるんだ」とアピールするのは、日本では直接的すぎて逆効果になることがあります。ここは“急がば回れ”です。ビジネスの評価がウェットな人間関係・信頼関係の上に築かれることが現実なら、それを受け入れましょう。

上司や同僚と職場以外でのコミュニケーションを密にして、あなた自身をよく知ってもらうことです。コロナ禍では飲みに行く機会はつくりにくいですが、カフェテリア(社食)などリラックスした場を利用するといいでしょう。

私は永田町で秘書として働いた経験がありますが、政治家は相手に取り入って自分をアピールする天才です。奥さんやお子さんの誕生日、飼っている犬の名前まで覚えて、事あるごとに挨拶し、手紙や花を贈るのです。もちろんビジネスでそれを真似するのは度を越していますが“自分を知ってもらうには、まず相手に対する関心を示す”というのは、参考にできるテクニックです。

こうして仕事以外での人間関係・信頼関係を深めつつ、仕事ではたくさん貸しをつくっておく。交換条件ではない善行の積み重ねが、後々効いてくるということが結構あります。洋の東西を問わずビジネスは損得勘定の世界ですが、日本人ソサエティの根底には義理人情が通じています。

性格がいい、正直で裏表がない、細やかな気配りができる、皆に献身的だ……などなど、そうした評価が定着すると、皆があなたのスキルを何割増しかで見てくれるようになり、より高いポジションに押し上げてくれるでしょう。

欧米はビジネスとプライベートの線引きが明確で、両者の人間関係はほとんど重複しません。でも日本は労働時間が長いせいかこの線引きがあいまいで、ビジネスでもプライベートでも“人間的にいい人”が支持され、高い評価を得るのです。これは米国出身の外国人が、この国に40年暮らして得た処世術です。

(構成=渡辺一朗 撮影=構溝浩孝)
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