6大会分を7800億円相当で一括契約
NBCが米国に向けて五輪中継を始めたのは、くしくも1964年東京大会が最初だ。当時、五輪の開会式として、米国向け初のカラー衛星中継が実現したという歴史が残っている。その後、1980年モスクワ大会で初めて「米国向け放送権」を得たが、米国代表チームそのものがボイコットして、放送自体が立ち消えとなった。
こうした歴史を経て、NBCによる五輪のテレビ中継は、夏季は1988年ソウル大会から、冬季は2002年ソルトレークシティー大会から現在まで途切れることなく続いている。
今年に延期された東京大会の中継は、2011年にIOCと締結した「2020年夏季大会までの独占放送権」を基に行われることとなる。NBCが当時支払った放送権料は43億8000万ドルで、2012年ロンドン大会から夏冬合わせて5大会分を含んだものだ。
そのわずか3年後、両者は「2022年開催の冬季大会から2032年夏季大会までの独占放送権(6大会分)」を、今度は過去最高額の76億5000万ドル(約7800億円、当時の為替相場)で契約した。2011年契約と比べ、冬季大会が1回分多いだけにもかかわらず1.7倍の増額で決定したことは、NBCがそれだけの投資をしても五輪番組は売れると見込んだものにほかならない。
視聴率が最も期待できる競技のひとつに陸上がある。「米国代表チームが千葉県での事前合宿を辞退」というニュースが瞬く間に全世界に広まったのは、陸上は高視聴率が期待できる代表的な種目だからだろう。
長期スパンで契約するIOCの狙いは?
なぜこれほどの長期スパンで放送権を契約する必要があるのか。そこにはIOCが安定的に収益を確保したいという狙いがありそうだ。
五輪開催地の選定は、少なくとも2022年冬季大会の誘致合戦まで、「公式な誘致活動を経て、開催の7年前にIOC理事会で決定する」という方法で続いてきた。あのキャッチフレーズ「お・も・て・な・し」で勝ち取った東京五輪だが、これは2013年9月、ブエノスアイレスで開かれた理事会の席上で決まっている。7年前というタイムスパンは微妙で、「次の大会開催地は決まっているが、さらにその次は未定」という格好が続いてきたわけだ。