罹るだけで病気との不利な戦いに…
また、最新の調査では、一般の人の死亡率1.9%に対し、透析患者さんの死亡率は14.2%と7倍以上の高率であることが明らかになっています(「新型コロナウイルス感染症に対する透析施設での対応について 第五報」日本透析医学会、2020.10.8)。
ちなみに、糖尿病の持病の有無について見てみると、糖尿病でない人は2.7%の死亡率なのに対し、糖尿病の人の死亡率は7.8%と大きくアップします。中でも糖尿病のコントロールがひどく悪い場合は、さらに11.0%まで死亡率が跳ね上がります(Cell Metabolism 2020;31:1068-1077)。
糖尿病の人は、そもそも合併症で腎臓を悪くしやすいこともあり、新型コロナウイルス感染で命を落とすことがないように、日頃から血糖値をコントロールしていく必要があります。
いずれにしても、新型コロナウイルスの流行収束後も、また必ず新しい病原体が登場することでしょう。そのたびに、私たちは感染症との闘いを勝ち抜いていかねばなりません。しかし、慢性腎臓病があるだけで、とても不利な戦いを強いられる。そのことは忘れないでいてください。
がんと同様に恐れるべき
あなたが一番、罹りたくない病気はなんでしょう。がんではありませんか?
がんが恐れられるのは、発見したときには手遅れで命が助からないケースが多いからです。だからこそ「早期発見が大切」といわれてきたのですが、普通の健康診断では、なかなかそれは叶いません。毎年きちんと健康診断を受けているのに、がんで命を落とす人があとを絶ちません。だから怖いのです。
一方で、慢性腎臓病については、まだ「余裕」を感じている人が多いのではないでしょうか。もしかしたら、「慢性」という呼び名がインパクトに欠けるのかもしれません。
しかし、だとしたらなおさら事態は深刻です。本当は、慢性腎臓病にはがんと同様に恐れる意識が必要です。
たとえば、肺の細胞に、あるとき運悪くがん細胞が発生したとします。この細胞はまず2つに、それが4つにと分裂を繰り返していきます。
その速度は非常にゆっくりとしたもので、肺のCT検査で見つけられる大きさに成長するには、20年くらいかかると考えられています。なぜなら国立がん研究センターの調べでは、なんと10~19年前にタバコをやめた人にも高率に肺がんが発生しているからです(International Journal of Cancer 2002;99:245-251)。
とっくにがん細胞自体は分裂を始めているのだけれど、見つけられない期間が最長20年近くあるわけです。