「新型コロナ」は5つ目の季節性コロナにすぎない
2つ目は、日本での季節性コロナウイルスの変化です。コロナウイルスは、医療者には軽微な冬の鼻カゼウイルスとしてよく知られていました。弱毒性のため調べる必要が無かったため統計がほとんどありません。経年にわたる軽微な症状の季節性コロナウイルスへの感染が、今回交差免疫を作ってくれていたわけです。
そのような中でも地道に10年間にわたり山形県衛生研究所が解析されていました。「季節性コロナウイルス感染症は冬に流行する」という論文にまとめられています(注8)。季節性コロナウイルスには4種類あるのですが、合計したものを合算した図表を示します。
1~2月にピークをむかえ11月12月の2~3倍の患者数が発生することが分かります。お示ししたPCR実施可能件数の増大と、季節性コロナウイルスの発生状況をベースにして現在の状況を考察してみましょう。
Fig. 3 The numbers of new positive cases (green) and deaths (red) caused by the new coronavirus (SARS-CoV-2) from March to November 2020
今年のコロナを振り返ってみましょう。冒頭の資料(注1)に掲載された国内の図表です。分かりやすいように色分けしています。死亡者数(右縦軸)が極めて少ないため新規陽性者数(左縦軸)とは縮尺が異なっています。
3~4月に全国規模で700人ほどの陽性者の山が最初に現れ、少し遅れて40人ほどが亡くなられました。そのころ「PCR検査数が十分でない」と騒がれていたことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。多分その通りだったと思います。
日本での新型コロナウイルスの死亡率は、0.016から0.001と言われています。大量のPCR検査がおこなわれるようになり、正確に計算できるようになりました。
公表されているこの図表は、「ミロのビーナスの腕」のように未完です。「手の変幻」を思い出されるかもしれません(注9)。少し補ってみましょう。