成功したフェミニストに対するコンプレックス

ツイフェミ化した中高年女性のアカウントの中には、フェミニズムや社会運動の世界で主流派になれなかった人が少なくない。修士課程や博士課程で中退・挫折した人、アカデミックポストを得られなかった人、社会活動や労働組合、当事者団体の運営に失敗したと公言している人が散見される(※1)

※1…大阪大学大学院出身の栗田隆子(@kuriryuofficial)は、刊行直前まで生活保護を受給しながら書き上げた『ぼそぼそ声のフェミニズム』(作品社)の中で、非常勤職や派遣社員などをしながら関わっていた労働運動での挫折体験を綴っている。

学問的・社会的に成功したフェミニストに対するコンプレックス、そして「自分こそが本当のフェミニストである」という矜持、それにもかかわらず、フェミニストの業界内部で冷遇されていることへの不満が垣間見える。

そうした不満を原動力にして、お互いの主張の是非、そして誰が本当の「フェミニスト」「被害者」「加害者」「弱者」なのかをめぐって、あるいはマイノリティ同士でそうした議論をすること自体がマジョリティによって仕組まれた分断の罠であると主張して、業界・団体内部での批判合戦や小競り合いを繰り返している。

フェミニストのイメージを押し付けられるのは嫌

ツイフェミの主張が第三者から見て分かりにくいのは、ツイフェミがフェミニストの内部抗争の過程で生み出された罵倒語(「弱者萌え」「有徴化」「貧困ポルノ」など)を多用しているからだ。

フェミニストであると自称している一方で、第三者から「怒りっぽく、性的な表現が大嫌いで、男を憎み、常に被害者意識で頭がいっぱいの女」という通俗的なフェミニストのイメージを押し付けられると、烈火のごとく怒り狂う。

そうした通俗的なフェミニストとは異なる「バッド・フェミニスト(※2)」であることを宣言しつつも、客観的に見れば、「怒りっぽく、性的な表現が大嫌いで、男を憎み、常に被害者意識で頭がいっぱいの女」にしか見えないツイートを熱心に繰り返している……という屈折がある。

※2…一般的に想定されているフェミニズムの主流から外れてしまうような関心・個人的資質・意見を持っており、これまでのフェミニズムに対して批判的な意識を持っているけれど、それでもフェミニズムの可能性を信じ、意識的にフェミニストと名乗る人を指す言葉。[ロクサーヌ・ゲイ2017]

特定のイデオロギーに基づいた用語や理論を通してしか、目の前で起こっている事象を解釈できない彼女たちは、長年の味方や仲間に対しても、わずかでも意見の異なる場面が生じると、「セクシスト」「名誉男性」というレッテルを貼って、手のひらを返したように攻撃を開始する。