21には専従管理職の役員がいません。女性8人で総務・企画や人事・採用・経理などをすべて担当していますから、物凄く効率がいい。会社の印鑑だって、そのうちの1人が管理しています。マスコミで「ノルマなし、ボーナス500万円で楽しくやってます」と紹介され、求人の募集をしたら希望者が殺到しました。そりゃ事実には違いないけど、その半面、厳しいところは厳しいですよ。

企業のイノベーションを妨げているのは「経営管理」。ほんとは社員も賢くて、きちんと自己管理ができるものです。21の“人事破壊”システムは、以前勤めた会社でピラミッド型組織のマイナスをイヤというほど体験したから可能となったんです。

18年間勤めた大手メガネチェーンを辞めた際は、心身ともにボロボロ。人間不信に陥りました。初代の社長さんからは評価していただき、「会社が大きくなったらおまえらのもんじゃ」と言われてきましたが、結局は初代の子女が後を継ぎ、議決権の7割を独占しました。

優秀な経営者も年を取ると保身に回り、子供の言うことを聞かなきゃならなくなる。亡くなれば、約束も全部反故になる。初代に悪気はなくとも、結果的に裏切られたわけです。出る杭は打たれるというか、謀略に嵌められ、物凄い攻撃を受け、もうだめだと思って退職願を出しました。後輩たちにも「送別会は一切するな」「『平本のことは嫌いだった』『しょうがないから従ってきただけ』と言えばいい」と伝えておきました。

2カ月後、業務の引き継ぎを終えたら解雇通知が来た。自己都合退職などさせない、というわけです。二代目に、「あなた、今度メガネ屋をやるなら日本に住まないで」と言われた。まあ、実力は認められていたんでしょうが(苦笑)、その後は自宅が監視され、窓ガラスが割られ、車のドアが壊された。正直、殺されるかもしれないと思ったほどですよ。

何を信じて生きていけばいいのかわからず、悩みに悩みました。藁にもすがる思いで本屋に飛び込み、宗教書・哲学書をまとめ買いしたんです。キリスト教や仏教の関連書に交じって、『論語』もありました。出版社は忘れましたが、大判で字も大きく読みやすいイラスト入りでした。

読んでみて、あ、孔子ってほんとに人間臭く生きているな、と思いました。当時の僕の気持ちとぴったり重なったんですよ。

孔子だって、出世はできなかった。2500年前、殺戮が日常茶飯事だった中国・春秋時代に、勝った者が財宝も女もすべてを奪うという当時としては当たり前のやり方を否定したんですから。恐らく他人に裏切られるような経験もしたでしょう。でも、あの人は名を残した。気持ちが重なったのはそういう部分です。その後も『論語』についての本を10冊以上読みました。わかりやすいとこだけ、じっくりと考えながら読む。読み終えた分は社員寮にあります。