ハシゴ酒の果てに人を刺して逃げた50代男性(記憶なし)
さらに別の事件。
東京から京都に出向き、飲み屋をハシゴした挙句、ペティナイフで客を刺して逃げた50代のオヤジは、何のために京都に来たかも忘れるほど酒に溺れてしまった。
移動中の新幹線でビールのロング缶を3本空け、そのあと京都駅近くの居酒屋2軒で生ビールの中ジョッキと焼酎の水割りを10杯ほど。ここで記憶は途切れる。
足跡をたどると、被告人は多くの料亭、茶屋が並ぶ先斗町まで歩き、赤ちょうちん3軒で中生+焼酎水割りをやはり10杯やってから、今度はスナックに入店していた。
「やっぱり1杯目はビール、そして焼酎ですね。なんで私が焼酎を飲むかというと、燗酒を5合飲むと、キレてしまうからなんですね」
日本酒を避けても酒量が度を越せばしっかりキレてしまうのが被告人なのだが、それにしてもよく飲む。なんと、このスナックでは焼酎のボトル2本を飲み干した。それから、なぜか屋台でお好み焼きを3つも買い、次の店に差し入れとして持っていく。酔いも回りに回り、最後の店に入ったときには正体不明になっていた。
ここでも焼酎の5、6杯は飲んだだろうと被告人は振り返る。で、とうとうホテルに帰ろうとタクシーに乗ったとき、店に上着を置いてきたことに気づいて引き返すのだが、その途中で人を刺してしまうのだ。ナイフを持っていた理由は不明(本人は護身用と表現していた)。
▼「今度(刑務所から)出てきたら、死ぬまで飲みません」
「悪いボッタクリに声をかけられたのか。何もなくて人は刺しません」
記憶がないので適当なことを言う被告人。前科も多数あり、飲み始めたらきりがなくなるのも自覚していたのに、なぜ、こうなるのだろう。
「服役中は、シャバに出たら思い切り飲みたいと思っていますから、出てきたらそりゃ飲みます。今回はすみませんでした。刑務所で今後の生き方を考えます」
裁判長の問いかけにも、納得できる説明はない。しかし、こんな被告人でさえ、「最後に言いたいことは?」とうながされると言ってしまうのだ。
「酒さえ飲まなければ自分の人生は変わっていたと思います。もう酒はやめます。今度出てきたら、死ぬまで飲みません」