読売は異例の「弁明」を掲載

毎日新聞の牧氏のコラムが出る2日前の6月3日付の読売新聞朝刊の第2社会面。ここに社会部長名で「次官時代の不適切な行動」「報道すべき公共の関心事」との見出しを付けた記事が出ている。牧氏が「ヘンな記事」と指摘した前川前事務次官の出会い系バー出入りスキャンダルの読売記事(5月22日付朝刊)についての弁明記事だ。いや、言い訳がましい記事に読めてしまう。

冒頭から「読売新聞の記事に対し、不公正な報道であるかのような批判が出ている。民進党の蓮舫代表らは、この問題について『極めてプライべートな情報』とも指摘した。しかし、こうした批判は全く当たらない」と主張する。

そのうえで「記者会見した前川氏は『私の極めて個人的な行動を、どうして報じたのか』などと語ったが、辞任後であっても、次官在職中の職務に関わる不適切な行動についての報道は、公共の関心事であり、公益目的にもかなうものだと考える」と述べる。

なるほど、その通りかもしれない。しかしながら、どうしてこの時期に記事にしたのか。もっと言わせてもらえば、なぜこの時期に前川氏の個人的情報をつかめたのだろうか。その情報を知っているのは、文科省の幹部ぐらいのはずである。

それに「青少年の健全育成や教職員の監督に携わる文科省の最高幹部が、違法行為の疑いが持たれるような店に頻繁に出入りし……」とまで社会部長が書くほど大ニュースならば、なぜ第1社会面のトップにするなど大きく扱わなかったのだろうか。

加計学園問題に関わる記録文書が大きなニュースになっているなかで、前川氏のスキャンダルを明らかにする以上、批判を受ける覚悟も必要ではないか。

読売は弱気になってきた?

ここまで書き進めたところで、6月7日付の読売新聞朝刊の社説を見てみよう。

見出しが「獣医学部の要不要論を冷静に」である。なんとおとなしいではないか。書き出しも「獣医学部の新設手続きが適正かどうかは、冷静に議論すべきだ」と始まる。

社説の文中、「首相は、愛媛県今治市での学部新設について、自らの関与を改めて明確に否定した」と書いてはいるものの、「政府も、獣医学部新設を認めた理由や経緯の詳細について、より分かりやすく、積極的に説明することが求められよう」と述べるなど、それなりに客観的である。さらに社説の最後は「国家戦略特区は、地域を限定してさまざまな岩盤規制に例外を設ける制度だ。それだけに、行政手続きの透明性や公正性をしっかり確保しつつ、進めることが重要だ」とまっとうな主張を展開している。

これは想像だが、読売は少しばかり弱気になってきているのではないか。週刊誌では「権力にすり寄る」などと批判され、世論からも「保守色が強い」とみられている。今回の加計学園問題では特にその傾向が強い。