失敗を恐れない人工知能
最初に何も教えてもらわずにゲームを始める人工知能は、最初のうちは当然ミスの連続です。ところが、人間と違って、そのミスをしてもまったくめげません。失敗したら恥ずかしいとか、バカにされたらどうしようとか、無難な手を打とうとか、そんな邪念が一切ありません。ダメなら、やり直せばいい。失敗を少しも恐れてないのです。何の屈託もなく何度も何度もトライ&エラーを繰り返すことで、ルールや「上手なやり方」を意識しては決して発見できない発想や方法にたどり着いていくのです。
一方で、僕たち人間は、いくらそれが糧になるとはわかっていても、何度も何度も失敗するということにはなかなか耐えられません。早くクリアしたい、成功したい。そして、基本的なやり方をマスターし、上級者のやり方を真似します。さらに、できるだけミスのないように事前にしっかりと予備知識や情報を入れてから始めるので、どうしても「無難な動き」に収まってしまいます。
もちろん、ミスや失敗を減らすことはできるのかもしれませんが、すでにパターン化された方法を少しアレンジするくらいしかできなくなってしまいます。根本的に新しい方法や発想を生み出すことから逃げてしまっているのです。
僕たち人間も、幼いころは細かいやり方や失敗などをあまり意識することなく、自由に動き回れたものです。好奇心も強く、吸収も早い。しかし、大人のような体力や思考力、技術は持っていません。子どもはいくら自由で柔軟な思考を持っていても、具体的にアウトプットする力が乏しい。
人工知能は、いわば人間の「子ども」と「大人」の“いいとこどり”のように思います。自由な発想で失敗を恐れず試行錯誤できる子どもの屈託のなさと、大人の高い計算能力を掛け合わせたもの。いや、人間の大人よりもさらに高い計算能力や集中力を持つわけですから、もはや最強です。