USJに入社してからは、人気のあるエンターテイメントを片っ端から試し、強いブランド力を感じたゲーム「モンスターハンター」やマンガ「ワンピース」は、見事イベント化にも成功した。
「消費者目線を起点にしないと、どんなアイデアも“消費者を満足させる”という本来の目的からズレてしまいます。そのため、私がUSJに関するアイデアを練る時は、必ずパークに行きます。変人だと言われますが、ほぼ毎月、お金を払って家族とパークに行くことも続けています」(同)
タダで入れる自分の勤め先のパークになぜ自腹を切って行くのか、不思議に思うかもしれないが、「値段に見合う価値があるか」をマーケターとして分析するためには、この行動が不可欠だという。
実は大好きだというディズニーランドにも、当然自腹を切って出かけ、一般の人と同じように長い行列に並ぶ。消費者と同じ条件で体験することで、たとえ共感できなくても「人がこのブランドの何に惹かれるのか」が理解できるのだ。
「パークにいる時は、常に他人の反応に目を凝らし、会話に耳を澄ませて分析し続けています。どんな体験をしても、自分が人間としてどう感動するのか、という“ガッツメーター”を基本に、そういう自分を観察する“アナリカルメーター”の2本立てで見る癖がついているので、正直疲れます。職業病ですね(笑)。パークに連れて行くと、妻と4人の子どもも良いモルモットになってくれます。彼らの性格を理解したうえで反応を分析できるので、たくさんの発見があるのです」(同)
しかし、どんなに対象を理解し、データを駆使してマーケティングを行っても、最後の最後はソフト、つまり感性が必要になる。“カワイイ”がわからない森岡は、感性の豊かな人材をまわりに置き、意見を聞くようにしているという。自分の弱点を知ったうえで、チームプレイで補っているのだ。