5カ月で死後の整理を完璧にした医師

私の妻の父親は、外科医で、仙台市と福島市の2カ所で病院を経営していました。両方を飛ぶように往復しながらも、「頭のなかにコンピュータが入っているような人」といわれるくらい明晰で活力がありました。61歳のとき、入浴中におなかにしこりがあることに気がつきました。肝臓がんを疑って翌日に検査したところ、胃がんが原発で肝臓と肺に無数の転移があることがわかりました。しこりは肝転移だったのです。

それから数週間は、夜間の急患の手術も平然とやっていましたが、その後は福島の病院を閉鎖して、一部の職員を仙台の病院に移し、他の職員の再就職の世話をし、仙台の病院の新体制を整え、自宅死するときの往診医を決め、葬儀のやり方を決めて亡くなりました。子どもは、私の妻以外すべて息子で3人とも大学生でした。私は医師でしたが開業に関心がなかったことも義父は把握していて、5カ月の間に死後の病院の整理を完璧にしたのです。

冷静に死を受け入れたがん患者の男性

男性Kさん(65歳)は、肺がんの頸椎転移で四肢麻痺があるうえに、頸椎も金属で固定され頭もまったく動かせませんでした。がん末期ではこの状態が最も悲惨で、こうした患者さんのなかには「目が覚めないように眠らせてほしい」と頼んでくる人もいるほどです。しかし、Kさんの表情はいつも穏やかで、回診のたびに丁寧にお礼をいい、私たち医療スタッフはKさんの冷静さや穏やかさに感動していました。