惣菜改革と“おいしさ”の定量化はできるのか?

同社が力を入れるのが惣菜改革だ。ローリーデリカセンターには「おいしさ創造室」が併設され、官能評価員制度や「オムライス検定」なども導入。おいしさという主観的な価値を、数値と手順で再現できるようにしている。

アクシアルの惣菜部門を語るうえで欠かせないのが、「サラダ」「だし香るシリーズ」、そして店舗内での対面販売を軸とする「魚菜屋」だ。たとえば、ポテトサラダやマカロニサラダなどの定番品は、味のばらつきを抑えるために製造工程を見直し、官能評価の結果をもとに味付けを標準化した。「だし香るシリーズ」は、惣菜でありながら“家庭の味”を再現することにこだわった人気ラインであり、調味液の配合から加熱時間までマニュアル化されている。しかもこのシリーズは「減塩」でありながら、だしの力で“物足りなさ”を感じさせない工夫が凝らされている。

原信呉羽店のサラダ売り場
筆者提供
原信呉羽店のサラダ売り場
原信燕店のだし売り場
筆者提供
原信燕店のだし売り場

人手不足の中、あえて「袋詰めサービス」

また、「魚菜屋」は鮮魚と惣菜を融合させた“和の専門店”として位置づけられ、地元の魚を使った煮付けや焼き物を店舗内で丁寧に仕上げる。「手間をかけた分、再現性を高めて全店展開できる」──この思想こそ、まさにTQMがもたらした現場革新の象徴だ。

さらに注目されるのが、「袋詰めサービス」だ。アクシアル傘下の原信などでは、レジ通過後にスタッフが顧客の買物袋に商品を丁寧に詰める「サッカーサービス」を提供している。人件費削減が叫ばれる中、あえて手間のかかるこのサービスを続けるのは、「買い物の最後まで気持ちよく帰ってほしい」という“品質経営”の哲学があるからだ。TQMで培われた現場目線の改善と顧客満足の追求が、このような細部にまで貫かれている。

TQMを支えるのは人材である。アクシアルでは教育体系を再構築し、評価制度と連動した「スペシャリスト認定制度」を導入。単なるスキル評価ではなく、日々の改善活動やチームへの貢献が重視される。

現場力の形式知化とナレッジ共有を進め、「人が育つ仕組み」が整っている点も、アクシアルの強さの源泉だ。