「AIでたたき台→人間が清書」の功罪

さすがに何年後かまでは、具体的に断定などできない。それでも、素直に考えればやはりロストはしていくのだろう。まして、ここのところの生成AIの発達スピードは凄まじいものがある。

私の主宰している社会人向けの学習コミュニティの受講者さんにも「最近はAIに資料のたたき台を作らせて、それを清書して資料を作っている」という人がいた。

そこで私は、こんな質問を投げかけてみた。

「その資料で上司に報告・連絡・相談して、うまく伝わっていますか?」

受講者さんの答えは、次のようなものだった。

「カンタンな報・連・相なら大丈夫です」
「ただ、厳しくツッコまれると、うまく答えられなくなる時もあります」
「そもそもAIに作らせた資料なので、ツッコミの答えもAIに聞いたりしています」

このやりとりを通じて、やはりツールの変化は急速に進んでいくのだろうと感じた。同時に、変わらないもの、いや、変わってはいけないものもクリアになった。

そして確信した。「自分がやってきたことは間違いではなかったのだな」と。

“紙1枚”という「思考整理」法

2012年に独立して以来、私は「紙1枚」書くだけの仕事術を広めてきた。トヨタでは仕事の資料を「紙1枚」にまとめる文化があり、私はその本質を独自に体系化し、誰でも実践可能なビジネススキルに昇華させた。

そのカギは、「資料作成」法ではなく、「思考整理」法として「紙1枚」を活用していくことだ。私が伝えている「紙1枚」仕事術は、決して資料作成スキルではない。思考整理の技術だ。

紙資料を参照しながらノートパソコンを使用している男性の手元
写真=iStock.com/ipuwadol
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この点について、ずっと誤解され続けてきた。資料作成は、あくまでも思考整理という目的を達成するための手段に過ぎない。そう言い続けてきたし、著書にも繰り返し明記してきたが、今でも私のことを「資料作成」コンサルタントか何かだと勘違いして近づいてくる人がいる。

改めて明記しておきたい。「資料作成より思考整理」とは一体どういう意味なのか。

資料を「紙1枚」レベルにまとめるためには、当然ながら、あれもこれも記載するわけにはいかない。たとえば、業務改善に関するものであれば、課題の原因を5個も6個も書き連ねるのではなく、もっと根本的な、最も根底にある原因は何かと考え、考え抜いた先にたどり着いた「真因のみ」を資料に書く。だからこそ「紙1枚」に収めることができるわけだ。

この話の最大のポイントは、「紙1枚」に収めるために考え抜くのではなく、「紙1枚」という制約があるおかげで、「自身の担当業務について考え抜かざるを得なくなる」という点にある。

目的は「トコトン思考整理する=考え抜く」であって、この目的を達成できれば、資料作成自体は、別にどのようなスタイルであっても構わない。もちろんAIに作成させても何ら問題はなくて、好きなだけ活用すればいい。これが私のスタンスだ。