「もう雨や風が強い日に配達しなくていいですよ」
それが「商業調整協議会(商調協)」という存在。大手小売業は大型店舗の出店を抑制され、出店が認められるまで何年もかかり、しかも計画した店舗面積は大幅に削減されるのは一般的。ダイエーをはじめスーパー業界は「天下の悪法」と批判したが、国に押しきられた。経営者は拡大の道を断たれたと感じ、そこで小型店舗という新たな形態に活路を見出す必要に迫られた。
大型スーパーや百貨店、ショッピングセンターを視察するために訪れた米国でダウンタウンやガソリンスタンドに併設されていたコンビニに鈴木敏文氏(セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問)が着目。中小商店の近代化支援という名目で、地元商業者との関係を良好にするため、フランチャイズチェーンへの加盟を促した。その際の酒販店や米穀店への口説き文句が「もう雨や風が強い日に配達はしないでいいのですよ」だった。
元は米屋、酒屋、タバコ屋、塩販売店
このように米や酒、たばこ、塩などの販売免許を持つ業種店がスーパーの台頭に危機感を持っていたことも、コンビニの誕生を後押しした。実際、1971年スタートのセイコーマートの母体は酒類卸で、卸先の酒販店の近代化支援としてコンビニへの転換を促した。業種問屋との取引慣行や旧態依然とした営業スタイルからの脱却を図り、POS導入やチェーンシステムの導入が進められていった。
その後、ファミリーマート(1973年に西友ストアーの実験店として誕生、1981年にファミリーマート設立)、ミニストップ(1980年、イオングループが横浜市に1号店)、ポプラ(1983年、広島を中心に展開)などが相次いで参入。各社は地域ニーズに応じた商品やサービスで差別化を図りつつ、全国規模のチェーン展開を進めていった。
おりしも時代はオイルショックで高度経済成長が終わりを告げ、日本経済は成熟期へ。都市部の高密度化、モータリゼーションの浸透に加えて、深夜営業の飲食店や深夜勤務を含むサービス業の増加など、夜型のライフスタイルが広がったことも、24時間営業のコンビニへの需要を後押しした。
近年の調査では、夜間の活動(「夜活」)を行っている人は42.7%にのぼり、読書や散歩、筋トレなどが人気の活動となっています。また、睡眠に関する調査では、平均睡眠時間が6.4時間とされており、特に若年層では夜型の傾向が強いことが示されている、このような夜型のライフスタイルの広がりが、深夜営業や24時間営業を行うコンビニの発展を後押ししました。
苦肉の策が社会インフラに転換した
大店法が廃止され、2000年には大規模小売店舗立地法(大店立地法)が施行された。これにより、大型店やショッピングセンターの出店は実質的に自由化されたが、大手流通グループはコンビニに見切りをつけることなく、出店を続けた。
その後、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの災害を契機に、コンビニは地域に不可欠な存在とみなされるようになり、社会インフラとしての役割が認識されるようになった。
現在、コンビニは単なる物販の場にとどまらず、宅配便の受取、公共料金の支払い、ATM、マイナンバーの証明書発行といったサービスを生活者は手軽に受けられる。
ただ、草創期の「もう配達しないでいいんだよ」という加盟を促す口説き文句は姿を消し、人口減少下であっても、いま、再び「セブンNOW」といった宅配サービスに力を入れる。歴史の皮肉でもあり、時代の変化に対応し、生活者が求めるサービスを増やして成長を続けてきたコンビニの業態特性がにじみ出る。
