心の拠りどころとなる「言葉」を持つ

変化に適応するために重要なのが、メンタルの安定です。

予想外のことや思い通りにならないことが起こったとき、心が不安定でストレス過多の状態では、正常な判断ができません。変化に適応するには、精神をニュートラルに保つ必要があります。

ではどうすればメンタルの安定を保てるか。それは心の拠りどころを持つことです。

なかでも「言葉」は、自分の心を支え、安定させる力を持ちます。皆さんも悩みや迷いを抱えたとき、誰かの言葉に励まされたり、勇気づけられたりして、心の平静を取り戻した経験があるのではないでしょうか。

以前あるプロゴルファーと対談したときに、プロとアマチュアの違いを尋ねたことがあります。すると「プロには戻るべき基本がある。戻るべき基本を持たないのがアマチュアです」との答えが返ってきました。たとえ一時的にスランプに陥っても、どこへ戻るべきかわかっていれば、また調子を取り戻せる。だからプロは安定して結果を出せるのでしょう。

同様にビジネスや仕事で成果を出し続けるには、自分が戻るべき場所を持つ必要があります。その拠りどころとなるのが、言葉である。私はそう考えています。

成功している経営者や実業家がみな座右の銘を持っているのも、厳しい競争の中で数々の困難や試練に立ち向かうには、「この言葉に立ち戻れば心が安定する」という精神的支柱が必要だと知っているからです。

ビジネスマンと上昇矢印のシンボル
写真=iStock.com/metamorworks
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読書とは「精神文化」を継承する行為

なかでも読書がもたらす言葉との出会いは、特別な意味を持ちます。

長く読み継がれてきた良書は、精神文化を継承する役目を担っています。「心」は個人のものですが、「精神」は文化的なものであり、人間社会の中で広く共有することが可能です。

キリスト教精神や武士道精神が現代まで継承されているのも、書物に残された言葉が時代や国を超え、その精神を多くの人々に伝えてきたからです。

個人の心は常に変化しますが、精神は不変のものとして受け継がれます。本を読むことで自分の中に精神文化という揺るがぬ土台を築くことは、これ以上ないほど強固な拠りどころとなります。

私自身も読書を通じて、数々の先人たちの精神に触れてきました。本の中で印象的だった言葉や気に入った言葉は手帳やスマホにメモしておき、心がざわついたときに読み返すと、冷静さや落ち着きを取り戻せます。

たとえるならゲーテやドストエフスキーが常に心の中にいて、強力な味方になってくれるようなもの。彼らのように歴史に名を刻むほどスケールの大きい人間は、今の日本を見渡してもなかなかいませんから、その言葉を読み返すうちに自分の悩みがちっぽけに思えてきます。