酔っ払いのランク付け
それでも庶民はのんきなもので、ランキングが大好きな江戸っ子は、酔っ払いの度合いをもランク付けして楽しんでいる。
一般的な酔っ払いは「ずぶ六」と呼ばれた。「ずぶ」は「ずぶ濡れ」などの「ずぶ」で、「すっかり」という意味。「六」は人に付ける愛称で、すっかり酔っぱらった野郎、ということになる。
この愛称の「六」と数字の「六」を掛け、江戸っ子は酔っ払いを「ずぶ三」から「ずぶ十二」まで分けてランク付けした。まず、「ずぶ三」はほろ酔いの状態で、「づぶ三の頃が酒盛りおもしろし」と川柳に詠まれている。
「ずぶ五」になると人に絡む状態。同席している人にはいちばん厄介で、だいたいこの段階になると喧嘩が始まる。
「ずぶ五」を過ぎて「ずぶ六」になるとすっかり酔っぱらって寝てしまうのでかえって都合がいい。そして「ずぶ十二」ともなると、ああ恐ろしや、大至急で雑巾や盥が必要な状態となってしまう。
江戸名物「酒合戦」は女性も参加
また、江戸の町では酒量を競う大会「酒合戦」も盛んに行われた(図③)。女性も参加していたというから、社会全体に飲酒の習慣が広まっていたことがわかる。
文化12(1815)年に行われた酒合戦では、天満屋の美代女なる女性が、なんと3升7合も呑み干したと記録されている。しかし誰もがそんなに呑めるわけはなく、図の中にもいるように、早々に撃沈し、「ずぶ十二」の段階に入っている参加者も……。
江戸の戯作者で浮世絵師の山東京伝は、この酒合戦を、慶安年間(1648~52年)の頃に流行った風俗だと『近世奇跡考』に記している。幕末の幕臣で、江戸無血開城の立役者・山岡鉄舟も盛んに酒合戦をしていることから、その後、200年ほどもこの“奇行”は続いていたものと思われる。
外国からやって来た宣教師が言葉を失うのも無理もない。


