「AGI(汎用人工知能)」と「ASI(人工超知能)」も夢ではない

AIの研究者には、究極の目標があります。それは、人間と同等あるいはそれ以上の処理能力で、ありとあらゆる作業を、人間からの指示なしで、自分の判断で自律的にやりこなす、いわゆる「汎用人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)」の実現です。

2022年11月の「ChatGPT-3.5」の登場で火がついた生成AIブームは、AGIが実現する日を一気に近づけたと言われています。さらに、その先にある人工超知能(ASI:Artificial Superintelligence)の実現も、もはや夢ではないといいます。

ASIは、人間の頭脳を超え、人間では解決不可能なさまざまな難題を一気に解決してしまう知能を持ったAIです。世界中で開発が急速に進むヒューマノイドや四足歩行のスマートロボットなど、とりわけ日本が得意とするこの技術にASIを頭脳として搭載すれば、まさにドラえもんや映画『スター・ウォーズ』でお馴染みのC-3POやR2-D2などが存在する世界が現実のものとなるのです。

AGIやASIが実現すれば、人類初めての出来事です。どのような世界が私たちを待ち受けているのか、想像もつきません。AIの研究者でさえ、進化した生成AIが世の中に及ぼす影響すべてを予測することは極めて困難だと言っています。未知の部分が多いだけに、「AIの活用と規制の両立」といった課題は残ります。しかし、リスクを理解した上で安全対策に向けた議論を重ね、有益な部分を社会活動の中で有効活用していけば、生成AIが幅広い分野で革新的な結果を生み出すことは間違いありません。

生成AIの社会への影響は、産業革命やインターネット革命を超えるとも言われています。生産性や効率化を高めるだけでなく、「成長を持続可能にする」という意味でも、生成AIはもはやなくてはならない存在なのです。

英語学習に生成AIはなぜ最適なのか

「成長を持続可能にする」。これはまさに英語の学び直しにとって朗報です。

英語の学び直しに前向きなミドル・シニアの方々にとっては、偶然のタイミングとしか言いようがありません。数年前までは考えられなかったことです。生成AIを英語の学び直しに取り込めば、一気に景色が変わります。

すでに「ChatGPT」などの生成AIを「使っている」あるいは「使ったことがある」という方もおられると思います。とはいっても、社会で生成AIの活用が広がる中、個人で利用する人たちは、日本ではまだまだ少数派です。

私自身も流行のテクノロジーに飛びつくタイプではありません。じっくり時間をかけて、周囲の様子を見ながら試すほうで、「日常生活に必要がない」と思えば、あえて手は出しません。

しかし、「ChatGPT」をいろいろとリサーチする中で、「これはもしかしたら英語学習に使えるのではないか」と気づき始めたのです。今風の言い方だと「これ、やばいかも」でしょうか。生成AIを使えば、日常的に英語で「聞く」「読む」「書く」「話す」のいわゆる4技能に触れる機会が皆無に近い日本で、何かが劇的に変わるのではないかと。

貴島通夫『今からでも遅くない!60代からの英語学び直し術』(プレジデント社)
貴島通夫『今からでも遅くない!60代からの英語学び直し術』(プレジデント社)

実際、そのとおりでした。もはや4技能ではなく、これに「考える」が加わり、5技能と言ってしまっても過言ではありません。「英語の学び直しで生成AIを使わないのは機会損失だ」と言わざるを得ないのが、率直な感想です。

かつては一部の人しか使っていなかったインターネット、スマートフォン(スマホ)、グーグル、ユーチューブ、ツィッター(現X)、フェイスブックの黎明期を覚えていますか?

今では誰もが当たり前のように使っているこれらのサービスも、そうなるまでにある程度の年月がかかりました。今は生成AIが「日常化」するまでの黎明期だと言えます。そのうち、生成AIはスマホのような存在になるでしょう。その日が来るのを待つのではなく、英語の学び直しをきっかけに、今から少しでもいいから慣れておくのです。