※本稿は、田岡凌『急成長企業だけが実践するカテゴリー戦略 頭に浮かべば、モノは売れる』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
突っ張り棒から派生した多様な商品
【田岡凌(以下、田岡)】平安伸銅工業さんは、突っ張り棒の国内トップシェアを誇る企業で、その市場開拓の歴史も大変面白いと聞いております。早速ですが、現在御社が取り扱うブランドからお話を伺ってもいいでしょうか?
【大川昌輝(平安伸銅工業CXO、以下大川)】はい、現在、平安伸銅工業が展開しているブランドは大きく4つあります。
最も古くからあるのが「HEIAN SHINDO」で、主に日用品のブランドです。服やカーテンを吊り下げる「突っ張り棒」、そこから派生した「耐震用家具固定突っ張り棒」や「突っ張り棚」など、機能性を重視した商品を広く展開しています。
2つ目がDIYに馴染みのない方でも気軽にDIYを楽しめるように開発した、「LABRICO(ラブリコ)」というブランドで、2×4材を使って壁面収納を広げるときに活用できるアイテムです。
3つ目が、「DRAW A LINE(ドローアライン)」というブランドで、クリエイティブユニット「TENT」とコラボしたデザイン性の高いスマートな縦突っ張り型のカスタム・ファニチャーです。
最後が、発売後間もない、「AIR SHELF(エアシェルフ)で、これも突っ張り機構を活用して、壁を傷付けずに美しい空中棚を自由に設置できるアイテムです。
アメリカの浴室を見て「これは使える」
【田岡】よければ、突っ張り棒の誕生から、この3つのブランドが生まれてくるまでの歴史を教えてください。
【大川】平安伸銅工業の創業は1952年で、当初はアルミサッシの製造や、工作機械の加工をしていました。初代社長がアメリカに視察に行ったことが、突っ張り棒の始まりです。アメリカではシャワーとトイレが同じスペースに設置されていて、壁の間に「テンションポール」と呼ばれていた可動式の棒を固定してシャワーカーテンを吊り下げていたんです。バスルームはタイル壁で、穴を開けるわけにもいかなかったんでしょう。
当時の日本は戦後の経済成長期の真っ最中で、集合住宅が量産され始めていた時代でした。狭い部屋をいかに効率良く使うかを模索したときに、テンションポールが使えるはずだと社長は考えたようです。

