プロセスを経て気づくことがある

実際に、Aさんにこの「紙1枚」を作成してもらいました。

当初は「いや、こんなこと書かなくても自明ですが……」という感じだったAさんですが、実際に書き出してみると、「あれ、記憶が曖昧だな……」「わかったつもりになっていただけで、改めて考えてみるとうまく説明できないな……」といった、様々な気づきを得られたようです。

何より、書いている途中で「何のためにこの仕事をやるのか」が改めて明確になり、「仕事への親近感、一体感、つながりを実感できました」「確かに今の心境なら、右往左往せず目の前の仕事に没頭できそうです」とおっしゃってくださいました。

その後、仕事机にこの「紙1枚」を置いておき、ときおり眺めて確認しながら働くことで、Aさんは注意散漫、無気力になりがちなこの時期を無事に乗り切ることができました。

私もかつて同じような悩みを抱えていたので、Aさんからの感謝のメッセージをもらった時は、自分のことのように嬉しかったです。

「なんでもAI化」が見落とす人間の感情

加えて、Aさんは、「正直、最初はめんどくさいと感じました。でも、書いているうちに心境が変わってくることを体感でき、今回に限らず、もっとこういった面倒な過程を大切にしようと思いました」とも話してくれました。

「なんでもAI化」が叫ばれる現代においては、過程やプロセスが軽視されがちです。しかし、「書き出してみる、線でつないでみる」といったプロセスには、その過程で「心境が変化する」といった効用があります。プロセスカットは効率化をもたらしますが、同時に非人間化も促進します。

どれだけAIが普及しようとも、私たちが感情の伴う人間であることは変わりません。だからこそ1つくらい、こういったリカバリー手段をもっておくことにも意義があるのではないでしょうか。

メモ帳に文字を書いている男性の手元
写真=iStock.com/1shot Production
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