交通事故は時に重大な被害を生み、高額の賠償請求が発生することもあるだけに、安全運転を心がけている人も多いだろう。
では、人に車を貸して不幸にも事故が起きてしまった場合、賠償責任はどうなるのか。
例えば大学生の息子が合宿に行くので、車の保有者である父親が車を貸したとする。息子が人身事故を起こせば、被害者や遺族は、この息子だけでなく父親にも同じように損害賠償を請求できる。
被害者は取れるところ、つまり責任がある人から取るだけのことなのだ。つまり賠償責任という意味では、息子の起こした事故であろうが、保有者である父親自身が事故を起こした場合と同じなのだ。
車の貸し借りでは、運行支配と運行利益という考え方がある。車を支配下に置き、その利益を享受している者は、人に貸している間の事故でも責任を負わなければならない。
保有者の父親が息子に運転を許可した以上、車は息子を通して父親の運行支配下にあり、その支配によって利益を享受していると考えられる。また、支配下にあるからこそ、必要に応じて借り手に「早く帰ってこい」とか「高速道路は使うな」といった指示もできる。
貸し手には大変なリスクがついて回る
親子・夫婦はもちろん、高齢の親、友人、お隣さんに貸しても事故の場合の賠償責任は保有者にも同じようにのしかかる。では、息子が合宿に行く途中で、友達に運転を代わってもらい、その友達が事故を起こした場合はどうか。
父親は運転手交代を知らされていなかったとしても、貸し手として息子に指示・監督できる運行支配者であることは変わらず、息子が事故を起こした場合とまったく同じように賠償責任があるのだ。
一方、運行支配が及んでいない典型的なケースは盗難車の事故だ。泥棒が事故を起こした場合、保有者には賠償責任はない。