防災、高齢化支援「地域との協働」
2026年2月期の業績見通しは、連結営業収益5901億円(前期比12.6%増)、営業利益307億円(同20.7%増)、経常利益304億円(同18.2%増)、当期純利益183億円(同53.5%増)と、回復と成長の両立を見込む。増益要因には、ランサム影響の剥落(プラス29億円)、サニー事業の黒字転換(プラス16億円)、創業費の減少(マイナス4億円)などがある。
4月1日付で社長に就任した町田繁樹氏は、現場出身の叩き上げであり、「現場発のオペレーション改革」を掲げる。部門横断の「投資推進事業部」を新設し、システム、物流、人材開発に戦略的な投資を集中。店舗網の再設計やデジタル基盤の刷新にも踏み込む。
また、物流分野では、2024年4月にフジ、ハローズなどとともに「中四国物流研究会」を立ち上げ、共同配送の実証実験を始動。2024年問題への対応と持続可能な流通網の再構築を見据えた取り組みだ。
イズミは今、売上だけでなく「地域との共創」を強く打ち出している。丸亀市(香川県)、別府市(大分県)、佐賀市(佐賀県)などと包括連携協定を結び、防災、高齢者支援、教育など多様な分野で自治体と共働している。
「ゆめタウンの男」は社食で肉うどんを食べる
イズミの売上高営業利益率は4.9%と、スーパー業界では異例の高水準を維持している。人件費や光熱費の上昇に加え、M&Aや創業赤字の影響があったにもかかわらず、この水準を保てたことは、イズミのビジネスモデルが強固であることの証明でもある。
「日経MJ」の2023年度小売業調査によると、「地方スーパー」と区分けされる企業の中で粗利益率はトップの33.3%。2位の東急ストアを2.5ポイント引き離す。業界ではいち早くTQCによるカイゼン活動に取り組み、人件費と在庫コントロールに長けているのがイズミの強み。一人当たりの労働生産性(粗利益額=2025年2月期で836万5000円)も高い。
「ゆめタウンの男」と呼ばれた創業者の故・山西義政氏は世界最大の潜水艦「伊400」の乗船員だった。母親を広島の原爆で亡くし、戦後の闇市で始めた「干し柿売り」からイズミをここまでの企業にした。好物の肉うどんを社員食堂で食べるのが好きで、常に社員に話しかけた。トップと現場が近い組織文化ゆえ、高収益が実現されるのかもしれない。
売上1兆円を達成できるか
ただ、人手不足による人件費の増加は避けられない。イズミの限られた話ではないが、今後は収益の「質」の部分、すなわち既存店の生産性や業務効率化、生活者にライフスタイルに合った新業態開発の精度が問われてくるフェーズに入る。外食事業、カード事業、物流・施設管理といった周辺事業の収益性向上もカギを握る。
「まいにち、おいしい。まいにち、うれしい。」を掲げるイズミ。その姿勢は、消費者の日常に寄り添うスーパーマーケットの理想像を体現してきた。だが、いま同社が目指すのはそれだけではない。地方発の流通企業として、地域の暮らしと経済を支えるプラットフォーム企業への進化。サイバー攻撃という予期せぬ危機を教訓に、イズミは第二の創業期を迎えている。
目標は6年後の売上1兆円企業。現実的なハードルは高い。だが、NSC戦略と福岡深耕、デジタル改革、地域共創。そして同業との合従連衡(M&A)――その一手一手が、イズミを「地域に根ざした成長モデル企業」へと押し上げようとしている。


