細部に反応して感情を高ぶらせてしまう人
ほかにも、「主題を把握せずに感情的に言いたいことを口にする」というのも、噛み合わない会話の代表例のひとつです。
質問者「新システムの導入で、具体的に業務フローがどう変わるかご意見をお聞かせください」
βさん「新システム導入には絶対に反対です。今のやり方で何の問題もありません。新しいシステムなんて必要ありません。むしろ、現場が混乱するだけです。前の会社でも、新システムの導入で大変な目に遭いました。結局、元のやり方に戻したんですよ。それに、チーム全員がシステムを変えることに不安を感じています。こんな状況で新システムを入れるなんて考えられません。もっと現場の声を聞くべきです」
質問者は新システム導入の判断材料として、業務フローの変化について具体的な意見を求めています。
しかしβさんは、「新システムの導入」という言葉に反応し、質問の本質を理解しないまま、感情的な反対意見を述べ始めています。業務フローの変化という質問の主題からは完全に外れ、自身の経験や感情に基づいた反対意見のみを主張しています
その結果、質問者が必要としている客観的な情報が得られず、建設的な議論が進まなくなってしまいます。
問題は、まだ会話全体(=抽象的な意図や背景)の把握ができていない段階で、目の前に出てきた具体的なキーワードにだけ反応し、感情を高ぶらせてしまうことです。
つまり、βさんのような人は、自分の経験や思い(=具体的な体験や感情)を強く持っている一方で、相手が本当に伝えたいこと(=抽象的な目的・真意)を冷静につかむのが苦手だと言えます。
「客観的に教えていただけますか?」
このような人も、ビジネスの現場でよく見かけます。相手が何を判断したいのか、なぜその情報を必要としているのかを理解せず、自分の中にある感情や経験を一方的に話してしまうのです。
この場合も、6つの手法を駆使していきましょう。再掲します。
① 質問の目的、意図を明確にする
② 答え方を指定する
③ 質問を分割する(複数の情報について一度に聞かない)
④ 質問の前に前提を確認する(相手が持っている情報や認識を先に確認する)
⑤ 回答を途中で整理し、質問の意図から外れそうになったら軌道修正する
⑥ 時間や条件の制約を設ける
例えば、
「βさん、新システムについては様々なご意見があることは承知しています(④)。現在は、導入の判断材料を集める段階なので(①)、まずは現状の業務の流れと、新システムでどのように変わる可能性があるのか、客観的に整理させてください。具体的な作業の変更点を教えていただけますか?(③)」
と、相手の感情を受け止めたうえで、客観的な情報を得たいのだということを明確にして尋ねます。もし、それでもβさんが感情的な反対意見に戻ってしまったら、
「システムの変更に対する不安はよく理解できました(⑤)。ただ、今は新システムの導入判断のために必要な情報を集めている段階です(④)。感情的な議論は一旦置いて(①)、現在の3つの主要な業務について、新システムでどのように変わる可能性があるのか、客観的に教えていただけますか?(②)」
と、さらに具体的に聞くのがよいでしょう。
状況や相手の立場、感情に配慮しながら①~⑥の手法を適切に組み合わせられると、聞いていることにきちんと答えてもらうことができるはずです。

