コスモス薬品の食品比率は6割超

米国のドラッグストア業界はウォルグリーンがファンドに買われるなど、ウォルマートやアマゾンの攻勢で停滞する一方で、日本の業態は独自の進化を遂げている。JACDS副会長の森信氏(ドラッグストアモリ会長)は、「米国ではドラッグストアの品揃えが薄く、接客もない。一方、日本のドラッグストアは、品揃え・立地・対応力の三拍子がそろっており、生活者の信頼を得ている」と語る。

ドラッグストアの出店戦略は、半径1〜2キロ圏に集中した「狭小商圏」で成立する点に特徴がある。人口減少・過疎化が進む地方においても、少ない人口で採算が取れるモデルとして成立しているのだ。

とりわけ成功しているのが「フード&ドラッグ」型の展開である。青果・精肉・惣菜などの生鮮を強化するクスリのアオキ、食品比率が60%超のコスモス薬品、PB冷食開発を進めるウエルシアなど、“スーパーマーケットの代替”としての存在感を増している。

コスモス薬品が福岡市内で展開する店舗の看板=2023年7月20日
写真=共同通信社
コスモス薬品が福岡市内で展開する店舗の看板=2023年7月20日

この“近くて便利”なフォーマットは、都心にも郊外にも対応可能で、コンビニが人材不足で出店を控える中、ドラッグストアは成長余地が極めて大きいといえる。

一方、かつて成長の象徴だったコンビニエンスストアは、すでに約5万7000店舗まで拡大し、飽和状態に近づいている。新規出店は鈍化し、人手不足による24時間営業の見直し、都市部での店舗競合など、成長の壁が浮き彫りになってきた。そうしたなかで、ドラッグストアは“近くて便利”な存在として、地域の生活インフラへとポジションを移しつつある。

イオン系ウエルシアとツルハの大統合

ドラッグストア業界は今、再編のうねりの中にある。2021年のマツモトキヨシとココカラファインの経営統合に続き、2025年12月にはウエルシアHDとツルハHDの統合で売上2兆3000億円規模、店舗数は5000店を超える巨大チェーンが誕生する。ツルハの鶴羽順社長は「2032年2月期に売上高3兆円を達成し、アジアナンバーワンのドラッグストアになる」と意気込む。

ツルハドラッグ
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チェーン各社の中でも、調剤併設店舗の比率が高いウエルシアは、健康拠点としての機能強化に力を入れている。一方で、ツルハはPBの拡充や海外進出に積極的で、両者の統合は“次世代型ドラッグストア”のモデルケースとして注目される。

統合はツルハがウエルシアを株式交換で完全子会社化し、イオンがツルハに対してTOB(株式公開買付)を実施して出資比率を50.9%に引き上げるというスキームだ。統合によるシナジー効果は今後3年間で500億円を見込む。とくにイオンとの連携による食品供給力を生かし、「調剤×日用品×食品」の三位一体モデルでワンストップ化を加速させる。

ウエルシアとツルハは業界第3位のマツキヨココカラ&カンパニーを売上規模で2倍以上引き離すことになる。業界再編の号砲とも言えるこの統合は、今後のドラッグストア業界の構造そのものに大きな影響を与えることは間違いない。

ただ、急成長の一方で、課題も少なくない。JACDSの塚本会長は「業態ごとに特化するのではなく、顧客ニーズに合わせた柔軟な変化を遂げられることこそが、ドラッグストアの強み」と説明するが、オーバーストア化による競争激化と利益率の低下はいなめない。そして調剤薬局併設に必要な薬剤師の確保や、専門性の担保が難しいという問題もある。

証券アナリスト出身で、小売業界に詳しいプリモリサーチジャパンの鈴木孝之代表は「ドラッグストア業界は再編の時期に入っている。(ツルハやクスリのアオキなど)家族経営から脱して真の大企業になれるかが試されている。これから調剤薬局も巻き込んだ大再編が始まる」とみる。