低下した「国家の脅威」のハードル

トランプ氏は、昨年の大統領選中から関税政策に多く言及し、その内容もエスカレートしていった。最終的には、中国からの全輸入品に60%、その他の国からの全輸入品に10~20%、メキシコからの自動車に100~200%の関税を賦課する方針を示した。こうした高い関税率は当初は荒唐無稽なものにもみられていたが、第2次トランプ政権がIEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠として関税政策を進め出したことから、一気に現実味を増した。

IEEPAは、第1次トランプ政権で用いられた通商法301条や通商拡大法232条と異なり、基本的には関税賦課の正当性に関する調査を経ずに、大統領の判断で即時に追加関税を発動できる。IEEPAは、大統領が国家の重大な脅威とみなした場合の経済制裁などに用いられてきたもので、関税政策には用いられたことがない。