血中アルコール濃度が上がりやすい
なぜアルコールの分解能力に男女差が生じるのか、その理由はまだよく分かっていないという。ただ、女性のほうが血中アルコール濃度が上がりやすいのは、体内の水分量から説明できるという。
「女性は一般的に筋肉は少ないのですが、体脂肪が多いため、結果的に体内の水分の割合は、男性が60%なのに対し、女性は55%程度にとどまっています。脂肪よりも筋肉のほうが多くの水分を保持できるからです。こうした水分量の差から考えても、女性のほうが血中アルコール濃度が上がりやすいのです」(真栄里氏)
やはり、女性のほうが男性と比べて、注意して酒を飲まなければならないということか。
飲酒する女性の割合が増加しているように感じるのだが、この点はどうだろう?
「はい、確かに女性の飲酒率は上がっています。日本ではかつて、女性の飲酒は一般的ではありませんでした。1954年の国税庁などの調査では、女性の飲酒率はたったの13%。それが、2013年の調査では、63.3%まで上昇。男性は82.9%なので、差が縮まっていますね」(真栄里氏)
男性の半分程度の飲酒量でも肝臓にダメージ
この調査では、「毎日飲酒」や「週1日以上、60g以上の飲酒」の割合の結果を見ると、まだ男女差があるように感じられるが、それでも女性の飲酒は確実に増えているのだという。女性の社会進出に伴い、女性の飲酒が当たり前になっているのだが、とはいえアルコールの分解能力の男女差が縮まるわけではない。
「大まかな数字としては、女性は平均して男性の8割程度しかアルコールを分解する能力がないといわれています。飲酒量や除脂肪体重が同じだとしても、血中アルコール濃度が男性より高くなると考えられ、それだけ女性のほうが悪酔いしやすく、急性アルコール中毒のリスクも高くなります」(真栄里氏)
日本では従来、健康に悪影響を与えない「適度な飲酒」の量として、1日平均純アルコールで約20g程度(日本酒なら1合、ビールなら中ジョッキ、ワイン2~3杯に相当)という目安が示されていた。だが女性の場合、この20gの3分の2から半分程度にするのが安全だと言われている。
いくらなんでも少なくないか、と酒飲みの女性は思うだろうが、これにはちゃんと根拠があるという。
「女性は、男性の半分程度の飲酒量でも肝臓にダメージを来し、重症の肝障害である肝硬変に至る飲酒量も男性の3分の2程度なのです。多くの研究で、女性の肝臓はお酒に弱いことが示されています」(真栄里氏)
なんと……。女性は肝臓をよりいたわって飲まなければならないのだ。