芸能界の「闇」にスポットが当たった
さらに年末、週刊誌報道で明らかになったのが、タレントの中居正広氏によるフジテレビの元女性社員への加害だった。問われたのは中居氏自身だけではなかった。
フジテレビが、女性に対して「重大な人権侵害の恐れ」があったと認識していたにもかかわらず、中居氏を番組に起用し続けていたことから、企業としてのガバナンス、人権意識の希薄さも問われた。同時に、フジテレビが日常的に女性を「宴席要員」として飲み会に同席させていたことも報じられた。経営幹部は引責辞任し、中居氏はタレントを引退した。
「同意があった」と一転、無罪主張
なぜこうした被害が後を絶たないのか。その大きな要因の一つに「性的同意」をめぐる圧倒的な知識・理解不足、認識のズレがある。
元大阪地検検事正のケースでは、2024年10月に開かれた初公判において元検事正は「準強制性交罪」で起訴された事実を認め被害者に謝罪までしていたのに、12月になると一転無罪を主張した。
代理人である弁護士は会見の際、「行為は争わないが、女性が抵抗できない状況かは疑わしい」として、「同意があったと思っていた」と無罪主張の根拠を述べた。
2023年に改正された刑法では新たに不同意性交等罪が設けられ、暴行や脅迫の有無にかかわらず、被害者が同意をしない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態での性的行為は処罰対象となった。同意が困難な状況には、飲酒などで酩酊していたり不意打ちの状況だったり、経済的・社会的地位の上下関係を利用するなども含まれる。
女性検事は、被害に遭った時に飲み慣れない酒を飲んで泥酔状態で記憶がなかったと主張しており、さらに途中で「帰りたい」と訴えてもいる。法に精通している元検事正がなぜこれで「同意があったと思っていた」と言えるのか。
フジテレビのケースでは、女性は被害当日以前に中居氏宅で開かれたホームパーティーに会社の先輩に誘われて参加していた。その先輩は番組のキャスティングにかなりの権限を持っている人物だと報じられている。中居氏も「大物」タレントとして局が最大限に気を遣う人物だった。
女性は被害当日も仕事の「延長」だと思っていたとされ、どこまでが女性の「意思」なのかという線引きは立場によってかなりの意識の開きがあると感じる。そしてもちろん家を訪ねただけで性的な行為に同意したとは到底言えない。